ITER誘致で青森・六ヵ所村が急浮上

那珂町は冷却用の水確保に課題

 国際熱核融合実験炉、ITERの国内候補地をめぐり、青森県六ヶ所村が有力とする見方が、県内外の関係者間で急浮上している。電力会社で作る電気事業連合会や経団連、経済産業省などの意向が強く、那珂町誘致を狙った文部科学省、経済効果を期待した県や、同町は思惑が外れそうだという。一方、反対派は「あんな危険なものはいらない」と歓迎する。 ITERの国内候補地については、十八日に文部科学省が、専門家による適地検討結果を公表した。それによると、五点満点の採点基準で、那珂町が四・三を獲得し、六ヶ所村の四・一、 北海道苫小牧市の三・五をしのぎ、一歩リードしたかに見えていた。
 関係者の話を総合すると、苫小牧市は同調査の結果、「選定する積極的理由に乏しい」とされ、事実上は選択肢から除かれたようだ。このため、国内に誘致する場合の候補地は、「候補地として十分な適性を有する」とされた那珂町、六ヶ所村から絞られるのが確実という。
 その上で複数の関係者らは、六ヶ所村の切り札は、放射性廃棄物の廃棄物処分場だと指摘。東京電力などの電気事業連合会、財界総本山の経団連、エネルギー政策や原子力を仕切る経済産業省も、集中する核施設群との関連から、「六ヶ所が適地との判断に傾いている」とする。
 那珂町は表面的に見る限り、極めて有利な材料に恵まれていた。同じ那珂町の日本原研那珂研究所には、核融合の関連研究施設JT60があり、隣の東海村には原研東海研究所、核燃料サイクル開発機構、日本原電東海発電所、日立市には原子力関連の日立製作所、大洗町にも原子力関連施設が集中。研究環境として最適だった。
 東京や水戸市、日立市などの都市部にも近く、内外からやって来る研究者の家族には、教育や娯楽を含めた生活環境も、首都圏や大都市、中堅都市に遠い六カ所村、苫小牧市より有利とされていた。
 しかし、那珂町は海から遠いため、冷却用の大量の水は、地下に専用パイプラインを引き、海から直結さす必要があり、表面化していないコストがかかる。加えて、人口密集地が近いため、高温でパイプが破損した場合など、トリチウム汚染の心配もあった。
 一方、六カ所が不利とされた研究環境は、ブロードバンド時代の技術革新が補足。特に、大きな問題にはならないともいい、「当初から実は六カ所が裏本命だった」という説を裏づける。
 ITERを担当する文科省は、六ヶ所村に自らの関係する施設が皆無。那珂町や東海村、大洗町などに、同省関連の特殊法人が集中立地しており、那珂誘致を考えていたようだが、経産省は電事連や財界を背景とし、その影響下には商工族の国会議員が。
 「最後は、政治力の差で決まる」というのが関係者間の定説で、県内関係者は「梶山(静六)さんが亡くなったのが痛い。塚原(俊平)さんも亡くなってるし…」と、経産省へのにらみが利かない現状を嘆く。

時間預託ボランティア「ナルク県南」設立

財政難と福祉・両立の切り札として

 財政難と福祉を両立させる切り札として、密かに注目される時間預託ボランティア。県南二カ所目の拠点が二十日に誕生した。「ナルク県南いばらき」(畠山伸一代表、事務所・藤代町谷中)。同日の設立総会には、約五十人の関係者が出席、活動計画や役員などを決めた。今後の成果が注目される。 時間預託ボランティアは、活動した時間を貯えて、必要な時に貯えた分の時間だけ、様々なサービスを自分や、家族のために受けことができる。同様のシステムは以前、関西の主婦がある懸賞論文に提案。注目を集めたことがある。
 かつて、英国の経済学者、リカードやマルクスらが唱え、幻想とされた「労働価値説」を、現実社会に適応さすアイデアでもあるが、広域の活動に発展せず、転勤すると貯めた預託時間が無駄になり、なかなか全国的に普及してこなかった。
 このため、長野市では同市社会福祉協議会などが、一時間五百円に換金できる形で、公的に制度化させた例もあるが、福祉の谷間を埋めるには、全国共通の制度として定着する必要があaる。
 「ナルク」は、そうした事情がら生まれた全国組織。NPO法人「ニッポン・アクティブライフ・クラブ」(NALC=ナルク=)の略称で、「ナルク県南」は、その地域活動拠点となる。全国で七十七番目、県内ではつくば、鹿島、日立、水戸に次いで五番目の設立となる。
 藤代町の手嶋律子さんが、半年前の今年四月から設立を準備してきた。手嶋さんはリクルートの元社員で、マンションの企画設計を担当。定年退職後は、パソコン教室などを開いていた。
 設立のきっかけは、「ナルク茨城」事務局長、熊谷智恵子さんとの出会い。熊谷さんの情熱と、「自立・奉仕・助け合い」というナルクの理念に共鳴した。
 「『住み慣れたところで住み続けたい』というささやかな願いを現実にするには、隣り近所、地域住民同士の助け合いや支え合いが極めて重要で、元気な今はだれかのために、老後は自分自身のために楽しい毎日を創造していくための拠点をつくり、活動の輪を広げていきたい」と設立にこぎつけた。
 会員は藤代、取手、守谷、利根などに住む約四十五人。手嶋さんは「今後は、高齢者や障害者の車の送迎などのほか、子育て支援、青少年の悩みごと相談、環境美化などのボランティア活動に取り組みたい」と話している。

故寺田弘画伯を顕彰−藤代

命の尊厳描いた画集刊行や展覧会

一九九七年に八十三歳で死去した新美術協会理事長、寺田弘仭画伯の作品を収めた 『寺田弘仭の世界――自然は訴える』 が完成し、二十日夜、藤代町のグリーンパレスで「発刊を祝う会」が開かれた。二十一日からは町中央公民館で「白と黒の世界 寺田弘仭展」が始まった(二十七日まで)。
 寺田画伯は、一四年旧六郷村(現藤代町)に生まれ、東京美術学校(現芸大)を卒業。第二次世界大戦に従軍し、満州やインパールなど南方で過ごした。復員後は死去するまで、人間の愚かさ、生命の尊さ、自然破壊の悲しみを鳥に託した作品を残した。特に、従来の日本画技法とは異なる、白と黒による独自のスタイルを創造。八八年には新美術協会展に出品した「自然は訴える」 で内閣総理大臣賞を受賞した。
 発刊を祝う会には、新美術協会の小宮山俊理事長をはじめ、町や教育委員会、画伯の指導を受けた弘彩会、後援会の関係者など百数十人が出席。発起人を代表して小林靖男町長が、「作品の中心に戦争体験に裏付けられた命あるものへのいとおしさがある。画伯の制作活動は町の誇りで、偉業を顕彰することは町の責務」とあいさつ。
三十数年前、画伯と同じ時期に町議を務め、その後県議に転じた川口三郎氏は、霞ケ浦で干拓の是非が県議会で議論された当時を振り返り、「霞ケ浦の水と自然を守るため画伯と協力し合った。半面、もっと華やかな絵を、とお願いしても聞き入れてもらえなかった」とエピソードを披露した。
 画集に寄せた「父を想う」と題した短文の中で寺田百合子さんは「きれいな絵を描こうと思えばいくらでも描ける。しかし、それでは自分の内にある思いを表現することが出来ない」と、あえて独特な絵の世界に向かった画伯の信念を伝えている。
 二十一日に始まった作品展は町教育委員会の主催。九○年の「酸性雨林」など大作二十七点や掛軸、従軍時の自作のスケッチ帳、家族あての絵葉書などが展示され、俳句指導者としての側面を含め、画伯の心の軌跡をたどっている。

真壁でふるさと文化子供まつり

伝統的文化継承、民俗芸能など発表

 子供たちが郷土に伝わる伝統芸能などを楽しむ体験型イベント「ふるさと文化子どもまつりin真壁」(同実行委主催)が二十一日、真壁町古城の町民体育館と国指定史跡・真壁城跡を会場に開かれ、親子連れなどでにぎわった。
 同体育館ではイベントに先立って開会式があり、共催の川俣勝慶県教育長らがあいさつ。「祖先から受け継がれている伝統や文化に触れ、自分の立っている郷土を知ることは、自己発見につながる」などイベントの意義を語った。
 プログラムは午前の部で郷土民俗芸能の発表があり、石下天神ばやし(石下町)や三和祇園ばやし(三和町)、猿島ばやし(猿島町)、女沼ささら(総和町)、真壁祇園ばやし(真壁町)が披露され、それぞれ地元の小学生が熱演した。
 午後からは珍しい民謡カラオケ発表に移り、真壁町立樺穂小の「どっこい真壁の伝正寺」など、地元に伝わる民話や伝承話をうまくまとめた。参加校は真壁町内の全四小学校をはじめ、東海村や水戸市、下館市内の八小学校で、いずれも会場を沸かせた。
 体育館前駐車場では、同町が独自に取り組む文化事業の藍染め、発掘、陶芸、竹細工など体験コーナーが設けられ、子供たちや親子連れに人気だった。「空から真壁城跡を眺めよう」と銘打った、消防はしご車体験には長い列ができた。
 また、真壁城の二の丸跡では火縄銃の実演もあり、イベントに花を添えた。日本ライフル協会所属の前装銃クラブの五人が、甲冑(かっちゅう)を装着して迫力ある轟音(ごうおん)を筑波山に向けて響かせた。
 このほか、地元の新鮮野菜や清酒など地元の特産品の販売もあり、模擬店も開かれた。同イベントは、ふるさと文化継承事業として前年度から取り組まれている。前回は県南の美浦村で開かれ、今年は県西地域の真壁町、来年度は県北の常陸太田市が会場になる。

つくばで新しい展覧会のスタイル「アンソール版画展」

4種類のゲームで楽しみながら作品理解

 つくば市吾妻、県つくば美術館で二十日から、「アンソール版画展」が開かれている。同館はこれに合わせ、「風刺の効いた特異な世界を、遊びながら深く理解してもらおう」と、筑波大大学院芸術研究科の協力で、作中人物の会話を想像するなど、四種類のゲームを用意して、新しい展覧会のスタイルを提案。ちょっとした人気を呼びそうだ。
 ベルギーの画家、ジェイムズ・アンソール(一八六〇〜一九四九)は、聖職者や身分の高い者を俗化したり、ドクロや排せつを取り上げるなど、人間の本性を風刺的に描き、表現主義、シュールレアリスムの作家から、その先駆性を高く評価されている。
 同館では、市民と美術館を結ぶ方法を模索。筑波大芸術学系の講師、直江俊雄さんに協力を求めた。同科の学生らが、アイデアを出し合い、ゲーム感覚で作品が楽しめる形で、ワークシートを作成することになった。
 @会話を考える「ふきだシールッ!」A理解度を試す「アンソール検定」B細部までじっくりと分析する「虫めがね大作戦」C作品のテーマを見付ける「さがしてみよう」―四種類を用意。来場者に自由に挑戦してもらう。
 直江講師は、「ワークシートで遊びながら、アンソール芸術に迫っていける。常識的な概念を覆そうとしたアンソール作品の趣旨にも合うはず」と話している。
 舟木力英館長も、「展覧会の間口を広げ、芸術の本質にも迫れる。『お高くとまっている』『分かりづらい』といった美術館のイメージを壊すには、こういう近付き方があってもいい」と期待を寄せる。
 展示会は、アンソールの版画二百二十六点を展示。二十七日午後一時半からは、「アンソールの人と芸術」と題し、実践女子大の末永照和教授が講演する。十一月十日は「作品鑑賞会」、同十三日は「ワークショップ銅版画」も開く。
 入場料は一般三百八十円、高校・大学生二百八十円、小中学生百八十円。十一月十三日の県民の日は無料。問い合わせは同館(電話0298・56・3711)まで。

   home