進める喫煙防止教育
生徒自ら「守る」意識醸成

県内全学校に配布された「ライフスキル教育」を盛り込む健康教育資料
県教委は二〇〇五年までの完全公立学校敷地内禁煙化に向け、学校ごとの禁煙対策検討会議と喫煙防止教育の推進を柱にすえている。検討会議では同方針の周知や児童生徒によるポスター・標語の制作、配布などに取り組む。

■方針転換■
注目されるのは喫煙防止教育だろう。その指針となるのが「今、求められている健康教育プラン〜ライフスキル学習を取り入れた授業の活性化〜」という手引書だ。「性・エイズ」「ストレス対処」「生活習慣の改善」などで、この中に「喫煙および薬物乱用防止」も含まれている。

ここでは、従来の「知識の伝達」から方向転換し、ロールプレイングなど生徒参加型学習で危険な行動や健康被害を回避するプロセスを学び、自ら判断して問題を解決する資質や能力(ライフスキル)を育てる。

ライフスキル教育は、神戸大学の川畑徹朗助教授が、米国の小学生用健康教育プログラムをヒントに研究を重ね、確立した。手引書はこれを基に、県学校保健会の主導で、養護教諭らを中心に二年間かけて編集された。

県保健体育課の鈴木聡指導主事は「喫煙や薬物使用への危険性を、頭ごなしに訴える『脅し方教育』だけでは、効果に限界がある。家庭や学校だけの指導も子供たちを守ることはできない。子供たちが自分を守る意識を育てるのが手引の大きな意義」と話す。

■現実重視■
ライフスキル教育には(1)実際に酒・たばこの販売店や、警察などを訪れ、取り巻く環境を学ぶ「フィールドワーク」(2)グループごとに各自で意見を出し合い、物事の多面的な見方を養う「プレインストーミング」(3)一つのテーマを議論しあう「ディベート」(4)日常生活でありえる場面や物語を想定し、主人公の立場で心境や行動を考える「ケーススタディ」(5)役割を演じさせ、問題点を解決させる「ロールプレイング」がある。

喫煙防止については(4)と(5)の活用を紹介。「仲の良い友達からたばこを勧められたらどうする」と問い掛ける。教師がたばこを勧める役を演じ、児童生徒の一人に勧められる役を演じてもらう。

全員には観察用紙が配られ、その状況を見て感じたことや、断り方について考えていく。これを重ねるごとに、自分達で状況を考え、台本も完成させていく。

最後に記入する自己評価欄には「自分の意見を相手にきちんと伝えられたか」「たばこを勧められたとき、何と答えるか?」など、改めて自分の行動や判断を再確認する配慮もなされる。

■広告分析■
世界保健機関(WHO)が喫煙習慣について「広告を媒体とした感染症」と指摘するように、手引書では氾濫するたばこ広告にも踏み込む。「広告制作者は誰に何を伝えようとしているのか?」を分析、制作側のテクニック研究例も紹介。

実際にたばこの広告を授業内で活用し、銘柄や人物、風景、キャッチフレーズなどを活動シートに書き出し、その工夫やイメージについて話し合う。これに反論するメッセージや「たばこの害」のキャッチコピーを考えさせ、健康志向の広告に作り変えていく。こうしてマスメディアからの影響に対処する能力を育成、批判的な思考能力の向上を目指す。

取材の終わりに尋ねると、鈴木指導主事も愛煙家の一人だと分かった。喫煙の理由を聞くと、「あまりに遠い記憶で覚えていないし、意識したこともないよ」と、笑顔でお茶を濁す。「これを機に、禁煙しようとは思っているんだけどね」。

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