画期的政策の宣言と頓挫
「青少年無煙の町」八千代町

町役場前には現在も「青少年無煙の町」のたて看板が掲げられる
「県西地域の人々の保守性が、古くからあるたばこの習慣への変化を許せなかったのでは」

前八千代町長で、資材会社役員の大久保敏夫さんは、在任中に取り組んだ「青少年無煙の町」宣言について振り返る。行政が青少年の喫煙問題に真っ向から挑む施策として、全国から大きな注目を浴びた。

しかし、大久保さんの退任後は、同政策の推進はもとより、同宣言の町という言葉さえ耳にしなくなった。一体あの宣言とは何だったのか。

■きっかけ■
大久保さんは一九九一年二月から九九年二月まで二期、八千代町長を務めた。健康を気遣い、二十代後半で喫煙を止め、肺がんで闘病生活を続ける父親を介護した。当選前から喫煙者の低年齢化など、進行する煙害に危機感を募らせていた。  町内の中高校で禁煙講演会を開催していた「無煙世代を育てる会」の平間敬文代表(平間病院長)からの働きかけや、PTA関係者のサポートをきっかけに、行政の健康施策とボランティアが連携し、脱喫煙社会を目指す同宣言案づくりに、九八年から着手した。

小中高校生をたばこの煙から守り、直接・間接的に触れることがない社会環境づくりを先取りして、正しい知識と行動力がもてる環境づくりを目指した。

■理解の獲得■
完成した宣言案は、(1)家庭と地域の連携で喫煙問題に取り組む(2)青少年喫煙の害について、継続的な啓蒙活動を推進する(3)小中高校での校内無煙化を推進する(4)文教地区でのたばこに関する宣伝自粛を求める(5)自動販売機の段階的撤去を推進する―の全五案。

とくに(5)に関して大久保さんは、「町内には六十弱のたばこの自販機がある。購入に遠慮のない自販機を撤去しない以上、青少年喫煙はなくならない。最優先の課題だった」と力を込めて回顧した。

同年四月の区長、副区長合同会議での提案や禁煙講演、市民を対象にした講演会、八月の町民議会での決議など、着実に周囲の理解を獲得していった。

しかし、同町内の販売業者が加入する下妻市たばこ販売協同組合から抗議があった。大久保さんは、決して譲らなかった。「町の禁煙化宣言ではない。若者を煙害から守るだけ。販売業者から横やりが入る理由がない。方針に絶対の自信があった」と振り返る。

そして九月の定例町議会本会議。議員からは宣言案(5)に関しての質問が集中。「たばこ税の中の町税の減収につながるのでは?」「販売業者の営業活動まで妨害する必要があるのか?」など質問を浴びた。

これに対し、大久保さんは若年者の喫煙率減少が疾病の減少と、将来の健康保険料の軽減につながるとし、健康を次世代に繋ぐ意義ある施策だと力説。反対派も最終的には賛同に動き、満場一致で議決された。

■宣言と頓挫■
同年十一月二十二日に「青少年無煙の町」宣言大会が、同町中央公民館で開催された。行政や教育関係者、PTA、同町中高校生ら七百人が参加。禁煙講演会や劇、作文発表などを実施。同町は新たなスタートを切った。

宣言直後、大久保さんは職員の理解を得て、町役場内において、昼休みの特定場所での喫煙以外は禁煙を推進。また町内の全小中高校長に対し、喫煙室を設け、同室以外の禁煙化と灰皿の撤去を要請した。

さらに具体案を検討する段階で、町長の任期が満了。大久保司・現町長との選挙戦に突入した。結果は四千票という大差で敗北。「宣言が選挙戦を左右したのは間違いない。結果は、町民の判断。新町長に託したかったが、全てを否定されるとは思わなかった」と、悔しさを隠し切れない。

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