県の指摘でコラム記事の内容点検
5項目にわたる「問題点」指摘で県が特に重大視している記述は、水道水の塩素処理に関する部分。奥井氏は「水道水の塩素処理/コイヘルペスでアトピーが悪化?」の見出しのついた今月3日付コラムの中で「KHV対策で水道水の塩素濃度を三倍にしているって話を聞いたけれど、3倍どころか、10倍の1.0ppmにしているらしい。どの学校も蛇口で1.0ppmだっていってたから」「大腸菌など細菌類はだいたい0.1ppmで死滅する。……ウイルスはそうはいかない。10倍の1ppmの塩素でもあやしいという。ウイルスの水道水対策として、どうしていいかわからないため、とりあえず塩素濃度を1ppmまで上げたのだろうか」と記した。

これに対し、県は4日早朝、「コイヘルペス対策での残留塩素の三倍化は事実誤認」「コイに対する風評被害対策をしている時期に、逆に風評をあおる記事の掲載は遺憾」と常陽新聞新社に対し口頭で抗議するとともに、土浦市水道部、同市教委、各小中学校に電話確認した結果から「KHV対策のために塩素を通常より多く注入している事実はないとのことである」と「問題点」を指摘。また、同市教委を通じ、各学校からデータ収集した結果から「(KHV問題が公表された)11月分の残留塩素データで確認したが、どの学校も蛇口で残留塩素濃度が1.0mg/Lとなっている事実はない」と指摘した。

さらに、「霞ケ浦から取水している企業局県南水道事務所においては、コイヘルペス対策として、通常より高い残留塩素濃度の確保はしていない。配水先の土浦市水道部においても、塩素処理の強化はしていないことを確認した」と指摘した。
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奥井氏は、1971年に医師の佐賀純一氏、飲食店主の保立俊一氏らと、霞ケ浦周辺では初めての自然保護団体、土浦の自然を守る会結成に参加。富栄養化防止条例の制定に向けた署名活動や、市民による流入河川の水質調査などに取り組んできた。九五年の第六回世界湖沼会議では実行委員会企画運営委員を務めた。現在、社団法人霞ケ浦市民協会の副理事長を務めているが、コラムを始めた2001年1月、「ひとりの薬剤師という職業をもつ女の主婦的発想にすぎないのかもしれないが」と前文に記した。今月3日付のコラムは129回を数える。

検証取材では、奥井氏が知人を通じて知った「塩素処理を三倍化」と同じ内容の書き込みが、国土交通省霞ケ浦河川事務所の開設するホームページ上の「霞ケ浦掲示板」にあることがまず判明した。
掲示板に初めて現れたのは「水道水の変異原性」との標題のある11月26日深夜の書き込み。ハンドルネーム「まんば」氏が「KHV対策によって処理塩素濃度が三倍にされたという話を聞いてなおさら不安に感じています」と記したのに対して、翌27日に「なまず」氏が「その話の情報源はどこですか」と尋ねている。

質問に答えて「まんば」氏が同30日、「こないだの意見交換会で県の企業局の方がそうおっしゃっていましたよ。確か処理濃度が0.35ppmになったとか。前処理の濃度なのか、水道蛇口での濃度なのかは確認しませんでしたが…」と書き込んだ。その二時間後、今度は「環境衛生指導員」氏が、両者のやりとりを補足するように「湖水が汚濁しているので前処理に増量したものです」と説明している。

「まんば」氏が情報源と回答した「意見交換会」は、国土交通省が昨年12月にスタートさせた「霞ケ浦に関する意見交換会」で、11月22日には第7回が「環境教育」をテーマに麻生町宇崎のレイクエコーで開かれ、意見発表者を含めて約120人が出席した。この意見交換会は、KHV問題が同2日に公表されてから初めての開催となったことから、県漁政課が参加者にKHVに関する説明資料を配付するとともに、県企業局の担当者が浄水場における対応策を説明した。

当日の参加者に企業局の説明内容について確認を求めたところ、「特に気づかなかった」「開会時刻に間に合わず聞き逃した」「内容は覚えていない」との返事が続いた。4人目でようやく「メモをとった」という参加者が現れた。

同メモによると、「水中のウイルス、細菌、原虫は人の口には入らない仕組みになっている/アデノウイルス、A型肝炎ウイルスなど活性炭処理で97%とれる/0.35ppm、30分以上で不活化する(安全のためCL=塩素=処理している)/活性炭でゼロになる/浄水池0.6〜1で処理/クリプトスポリジウム(原虫)対応できている/安心できる仕組み」と内容を要約している。しかし、「KHV対策」との関連を直接うかがわせる内容は含まれていない。

ただ、複数の出席者から、会場にはビデオカメラやテープレコーダーを手にした熱心な参加者がかなりいたとの情報が寄せられた。そのうちの一人の協力により音声を復元し説明内容を確認したところ、聴取不能の部分が一部あるものの、企業局による説明の骨格が判明した。

それによると、意見交換会の座長を務める前田修・富士常葉大教授から「KHVと水道水の水質」についてコメントを求められた企業局担当者は「コイのへい死については皆さんで心配だろうと思います」と切り出し、浄水場の工程を示す一枚の水処理フローシートをもとに、一般的なウイルス対策、KHV対策の順に説明を行った。

この中で、水中のアデノウイルス、A型肝炎ウイルスなど一般的なウイルスの除去率について、沈殿池で90%、急速ろ過池で50%、粒状活性炭ろ過池で97%と説明したあと、遊離残留塩素を0.35mg/Lの濃度で30分作用させるとウイルスは「不活化する。全然元に戻らない。一般的にいえば死んでしまうので、皆さんの口には入らない」と説明。

続いて、KHV対策に関する説明に移り、「KHVというのは(一部聴取不能)調べることができませんので、安全のために塩素処理の強化をしております。急速ろ過池の出口のところで、だいたい0.35以上を確実にしなければ(聴取不能)。で、活性炭で一度ゼロになります。ですから、浄水池というところに入ったところでは、0.6から1ppmの濃度を確保することで今は処置をしております。そういうことから問題には特に至らないのかなという形になります…」と述べ、一般ウイルス対策時の塩素濃度0.35mg/Lに比べ、KHV対策では一・七倍(0.6mg/L注入の場合)から2.7倍(1.0mg/Lの場合)に当たる塩素の増量を明らかにしている。

この倍率はホームページに記載の「3倍」や、音声テープ関係者が記憶する「約3倍」とおおむね一致している。

次回は、県が「問題点」指摘の際に添付した資料・データや、浄水場や学校現場での処理実態、法令上の塩素の扱いなどについてさらに検証する。



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