9月から赤潮現象続く
霞ケ浦市民協会(土浦市川口)では近年、船の上から湖水の定期観測を続けている。沖宿沖(土浦市)、牛渡沖(霞ケ浦町)、江戸崎入、天王崎沖(麻生町)、三又湖心(西浦)、高浜入(石岡市)の六地点で毎月、採取した水を研究室に持ち帰り、各種の水質データを測定しているほか、植物プランクトンや動物プランクトンの数を顕微鏡で計測している。

霞ケ浦では初めての、広大な湖面に広がる赤潮現象は、十月十七日の定期観測で確認され、一週間ほど前に発行された会報「霞ケ浦NEWS」十一月号で社会的に初めて報じられた。「湖心観測結果について」の報告と「霞ケ浦トピックス」欄の「植物プランクトン優占種が変化」と題する短文の記事をよると、観測当日は、透明度はどの地点も四十cm程度で最悪レベルに近かった。よくみると、湖水は赤茶けた色をしていた。長年、霞ケ浦を水陸から観察している船長氏は「淡水赤潮かもしれない」と直感を口にした。

この数日後、水道原水(湖水)を観測している県企業局水質管理センターからの連絡で、「九月中旬以降の湖水では、スケレトネマ・ポタモスという珪藻(けいそう)類が優占している」ことが分かった。同センターでは、同じ珪藻類のメロシラに似ているが、やや小ぶりで葉緑体の形が異なることに気付き、国立科学博物館筑波実験植物園の微細藻類(特に珪藻類)専門家に判定を求めたところ、湖面を浮遊する性質があり、富栄養湖で発生するといわれる同・ポタモスと判明。これまで、国内で確認例が少ないのは、緑藻(りょくそう)類と間違えられている可能性もあるとされる。

「霞ケ浦NEWS」によると、連絡を受けて改めて一カ月前の九月十二日に採取した湖水を観察した結果、それまでメロシラ類に分類していた中に、数は少ないが、同・ポタモスが見つかったという。

十月中旬の観測データ(概数)によると、三又湖心地点では、1ml当たりの植物プランクトン総数(細胞数・群体数)13,850に対し、珪藻類が13,460、うちスケレトネマは11,350。全植物プランクトン数に対する優占割合は81.9%だった。ほかの五地点でも、スケルトネマが96.0〜72.3%の優占率を示した。

霞ケ浦では、一九七三年夏のアオコ大発生以来、藍藻(らんそう)類のミクロキスティスの優占状態が九○年ごろまで続いた。その後、糸状藍藻類に属するオシラトリアやフォルミディウムが優占。二、三年前から珪藻類のシネドラやメロシラが多くなった。そして、今秋のスケルトネマの大発生―。

同属のスケルトネマ・コスタツムは、浅い海域に発生し、これまで有明海や瀬戸内海、東京湾などで赤潮をつくるプランクトンとして知られていた。これに対し、同・ポタモスは、淡水に発生し、淡水赤潮の原因となる。これまで、北米、南米、ヨーロッパなどで発生が知られるが、魚類などの被害は確認されていないとし、記事は「今回、霞ケ浦で優占種となったことで、生態系や魚類にどのような影響があるのか、注視する必要がある」と結んでいる。

県霞ケ浦対策課によると、国土交通省霞ケ浦河川事務所が十月に同・ポタモスを確認後に行われた、ヒメダカ(メダカの一種)を用いた生物試験では、毒性は確認されなかったという。
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霞ケ浦の生物相に関する、初めての総合的な記述とされるのは一九一○(明治四十三)年の「霞ケ浦北浦漁業基本報告書」。藍藻類のミクロキスティス、アナベナとともに、珪藻類のメロシラやシネドラの存在を記録している。植物プランクトンの種類・性質は、魚介類のエサとしてきわめて重要なだけに、県内水面水産試験場(玉造町)でも前身の水産振興場時代から定期的に観測を続けている。戦後の五○年のデータで62%を占めていた珪藻類は、六八年16%、七○年15%と次第に減少、アオコが湖内全域を覆った翌年(七四年)には6%にまで激減。ミクロキスティスが主役に躍り出た。

霞ケ浦情報センター機関紙「霞ケ浦ネットワーク」が、特集「アオコ失そうの謎を追う」を掲載したのは九四年十二月。「アオコの時代」は約二十年続いたことになる。その後の糸状藍藻類の優占期間は約十年。珪藻への交代は二、三年前だが、今秋は同じ珪藻類の中で入れ替わりがあった。

優占期間が短くなったのは植物プランクトンだけではない。在来魚の脅威とされるブラックバスなど外来魚の世界も交代が実に激しい。そうした急変続きの中で、在来魚は、ワカサギ・シラウオ、エビ・ゴロともに激減している。

数年前から続く湖水の白濁、今秋の赤潮―。KHV(コイヘルペスウイルス病)による養殖コイ大量へい死の陰で進行する異変だ。



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