常陸川水門に各層の反応
今月八日、霞ケ浦漁連(城取清之助会長)、きたうら広域漁協(方波見和夫組合長)、霞ケ浦北浦小割式養殖漁協(竹石正明組合長)の三者は、農水省を訪れ、コイヘルペスウイルス病(KHV)対策に関する六項目の要望書を提出した。橋本知事も同行した。被害救済対策が中心だが、最後の「常陸川逆水門の極限までの頻繁な開門」との記述が目を引く。

「今回の被害拡大の原因の一つとして、ここ数年頻繁に発生している白濁水や赤潮等に見られるように、霞ケ浦の急激な水質の変化が懸念されるので、緊急措置として、常陸川逆水門の極限までの頻繁な開門による水質改善対策を進める必要がある」との内容だ。

常陸川水門は、流域で多発した洪水対策と逆流による塩害防止を目的に、当時の建設省が強い地元要望で建設、一九六三年に完成した。当初は「開放」を基本にした水門操作だったが、六〇年代後半には塩分ご法度の鹿島地区工業用水を供給するため「閉鎖」が始まり、七五年には水資源開発公団(当時)と霞ケ浦、北浦、内水面漁連との間で漁業補償が妥結、水ガメ化のため操作の基本が全面的に「閉鎖」に切り替えられた。

KHV対策の所管は農水省、常陸川水門の管理・運用は国交省・水資源機構。提出先が違うとの議論もあったが、「率直な気持ちを国にぶつけよう」と盛り込むことが決まった。九月段階では魚道設置を陳情したが、今回は「逆水門開放」に絞った。霞ケ浦漁連(土浦市)によると、「魚道設置までには種々の角度からの検討が必要で時間がかかる。『待てない』との漁業者の危機意識の表れ」と説明する。

霞ケ浦・北浦漁業は驚くべき厳しい状況にある。関東農政局水戸統計・情報センター(水戸市)のデータでも、ワカサギ、シラウオなどの総漁獲量は、ピークの七八年一万七千四百八十七トンから〇一年には九割強もの激減となる二千六十三トン。今季も、水産加工業者(七社)を対象にした県霞ケ浦北浦水産事務所(土浦市)の聞き取り調査で、シラウオは前季を大きく上回っているが、ワカサギ、ハゼ、エビは低調。

〇二年の一般漁業生産額は五億七千四百万円(最高額は七七年の三十六億八千七百万円)。ピークの八二年に三十数億円を記録した魚類養殖も、富栄養化防止目的の「減面指導」も手伝って、十億三千百万円に減少した。とはいえ、一般漁業の二倍近い収入源の養殖漁業に今秋、KHVによる打撃が重なった。

「これまで心血を注ぎ四十年の歳月をかけて築き上げてきたものが、(KHVで)たった一カ月余りで全て崩れ去ってしまった」「我々養殖漁家の救済と霞ケ浦北浦の水産業の存続のため、特段のご配慮を」。要望書の初めの部分には、対県交渉でのやりとりを反映した緊迫感がある。
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常陸川水門をめぐっては、八六年九月、土浦市内で開かれた第二回水郷水都全国会議の際、上・下流の漁業者と、奥井氏ら市民の間で「ダブルゲート方式」などが議論された。しかし、行政関係者の参加は、ほとんどなかった。生物多様性を含む「霞ケ浦宣言」を採択した九五年十月の第六回世界湖沼会議では、漁業者はごく少数が会場で耳を傾けていただけだった。その後、潮来漁協、北浦漁連(当時)が逆水門操作の弾力的運用や魚道の設置を建設省(当時)などに要望したが、市民層の同席はなかった。

異変続きの今秋は様相が異なる。KHVの表面化後、アサザ基金(飯島博代表)は、霞ケ浦の環境改善と漁業の保護育成のため、
 (1)コイ大量死の原因究明
 (2)逆水門の柔軟運用
 (3)魚類などの移入規制強化
 (4)感染症まん延防止のためブラックバスなどの再放流禁止
を知事に要望した(十一月六日)。

「霞ケ浦宣言」の精神を継承しようと活動している霞ケ浦市民協会(堀越昭理事長)は、生物多様性を回復するため県と国交省に魚道設置を要望した(十二月十五、十七日)。バス釣り愛好者でつくるWBS(ワールドバスソサエティ)は今秋、魚道設置を求める署名とカンパ活動を全国規模で始めた。

公明党県本部(石井啓一代表)は、KHV対策で農水省に提出した六項目要望の中に、生物多様性の観点から「種々の魚類が生息できる元気な水系づくり」など統合的水資源管理の検討を盛り込んだ(十二月十五日)。

県は、国の来年度予算に向けた恒例の提案・要望で、霞ケ浦の総合的な環境保全対策(七項目)として、道路・市街地排水処理施設の設置、溶存態COD(化学的酸素要求量)除去技術の開発・実用化とともに、初めて「魚の生態系や生息環境改善のために」魚道の設置をつっ込んだ。

「水利用上、塩分もまた水質の重要な指標」として、常陸川水門にかかわる議論自体に長年消極的だった県としては様変わりだ。




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