カンボジア 4
教育省教員養成校専門家
四家明彦さん(32)
実践型授業へ改善図る
理科教育レベルアップ期待




高校教師向けの特別レッスンで浸透圧の実験を指導する四家明彦さん(中央)=プノンペンの教員養成校


 ポルポト政権による虐殺や内戦によるカンボジアの人的損失は大きい。負の遺産を抱えながら、国家の復興を目指す上で、教育を通じた人材の育成は国家の重要な課題になっている。
 しかし、教師を養成する体制は十分とはいえない。教師を増やし、質を高め、各種教材の開発が必要だ。特に理数科教育の分野では、生徒が科学的思考を身につけるため、実験や実習を取り入れた実践的な授業が求められるが、これまでほとんど行われてこなかった。
 従来の座学型授業を生徒中心の実践型授業に改善するため、二〇〇〇年八月から教員養成校(FOP)で「カンボジア理数科教育改善計画」がスタート。四家明彦さん=水海道市=はこのプロジェクトに専門家の一人として派遣されている。

 ■きっかけ■
 筑波大の学生時代に手話を通して福祉に接する機会があった。四年生の時、「先生になる前に国際的なことも体験しておきたい」と思い、青年海外協力隊に応募。九四年から二年半、アフリカのザンビアの高校で理数科教師をした。
 帰国後、県内の私立高校で非常勤講師を務め、一九九九年四月から千葉県柏市にある小中高一貫のサポート校「日本国際学園」に就職。サポート校は不登校の生徒らを対象にした教育施設で、部活動や課外活動も行うなど、フリースクールよりも学校に近い。高校卒業の資格も得られる。
 「教育が直面している問題がみえるだろう」と考え、あえて一般の公立学校ではなく、サポート校を選んだ。
 同学園の仕事で疲れを感じていた時たまたま専門家の話があり、少し環境を変えてみようとカンボジア行きを決めた。

 ■しごと■
 FOPはカンボジア唯一の高校教員養成機関。一年課程で、大学卒業後に入学し、高校教師の資格を得る。学生は約三百人で、うち約百人が理数科。理数系には優秀な人材が集まっているという。
 教える対象は、同校の教官が中心だが、長期休暇中には現役の高校教師を対象に特別講習を開く。教師も実験などによる実践的教育を受けてきた経験がないだけでなく、グラフが書けない教師はざらにいる。
 「今はそんなにびっくりすることは減ったが、生物の教官に平均のとり方を教えたのが最初」という。
 実験書を作成したり、実験器具はほとんど手作りだ。

 ■これから■
 二〇〇一年五月に着任し、二年間だった期間を来年三月末まで延長した。
 同じ学科の同僚であっても、教官の間のコミュニケーションはあまりなく、誰が何をやっているのか分からないような状況だった。しかし、このプロジェクトによって、教官同士が気軽に話し合える環境ができたのは大きな成果、とみる。
 実験そのものよりも実験書(ワークシート)の作成に労力を費やした。実験機材を作ったり、原理を理解していない人に順序だてて教えるためには有効なものだが、「最初のころは三十回以上も書き直してもらった。三年間はほぼそれに費やされた」という。
 「作った教材が全国に広がり、理科教育のレベルアップになれば」と期待する。

 【メモ】専門家:開発途上国への技術移転を行うため、政府開発援助(ODA)事業の一環として派遣される。都市開発や水資源開発などさまざまな分野の技術者をJICAは専門家と呼んでいる。一年以上の長期、一年未満の短期がある。専門家として海外に派遣されるための必須条件は@専門技術、知識を有しているA異文化のなかで技術指導ができるB外国語が使えるC心身とも健全―に加え、各分野のスペシャリストとして派遣されることから、人物の面でも信頼されることが要求される。

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