ワイズアンドテクノロジー   CEO・鈴木伸治さん

ソフトからハードまで経理の達人


カジュアルな服装で指揮を採る鈴木社長
筑波大近くのワイズアンドテクノロジーの巨大オフィスを訪ねた。「つぶれたスーパーの後を改造して使っています。パソコンの在庫のためのスペースと、ソフト開発者の頭の働きを最大限引き出すためのリラックスできる空間を創らないと」。CEOの鈴木伸治(1963年生)は、天井が高く都心のベンチャーなら丸ごと一社入りそうな社長室に陣取って、カジュアルな服装で指揮を採る。筑波大OBが、開発の主力を担うITベンチャーは、しかし、簡単に誕生した訳ではない。

ベニスの商人が貿易という当時リスキーなビジネスを管理するために編み出した、人類最大の発明ともいわれる『複式簿記』を、経営に生かし切る経営者は少ない。だが、ワイズアンドテクノロジー社にあっては、複式簿記のマスターが社員全員の必須課題だ。そこまで鈴木が経理にこだわるのは、自らが、経理の名門・大原簿記学校のOBであるためか。

「卒業の時、学校推薦でトヨタの経理に内定をもらったが、何だか乗り気がしない。リコーにいた兄の『これからはコンピュータソフトの時代だ』とのアドバイスで、週刊就職情報を片手に経理に関係ない都内のシステム会社に就職した」。最初に担当したのは、パソコン会計のシステム開発。「BASICなんて聞いたこともないし、分かりやすい解説本などまだない時代。夜十時まで残業、自宅では朝四時五時まで本を読んでプログラ言語を習得。誰も教えてくれない手さぐり状態」。体調を壊して三カ月で辞めた。

しかし、まだ走りだったプログラミングを実用レベルで習得した鈴木は、これを武器に今度は派遣でパソコン会計ソフトの開発。派遣の仕事に飽きたら、次は、通信会社。貿易会社のプロジェクトでシステム開発者もいない。ゼロから新たに通信を学ぶのに大変だったが、プログラミングで体験済み。ホテル予約システムを英国の外資系企業と展開するのだが、イギリスのエンジニアとプログラム言語という共通語で渡り合った。

しゃべりが得意だったのを買われて営業も担当。『歌って踊れるエンジニア』として引っ張りだこ。顧客は一流ホテル。プロジェクトマネージャー、エンジニア、サポートまでこなした。だが、突然ある出来事から、その会社が傾いてきて、ストレスがもとで体を壊し、緊急入院と診断。実家に戻り、地元の筑波大付属病院に入院することになった。

体調が回復するころには、主要スタッフ何人かで新会社を作ることことになり、取締役就任を要請された。つくばにソフト開発のテクニカルセンターを作ることを条件に役員就任を受託した。筑波大生をバイトで雇い、開発を教えてみると、すぐに上達した。ゲームの開発からボード、DOS/V機まで売りまくった。

若い世代で作った会社で事業計画もなく、リストラを断行せざるを得なくなった時、鈴木が初めて、自分が社長となることを決断。そのつくばテクニカルセンターを施設やスタッフ十二人ごとを引き継いで、現在のワイズアンドテクノロジー社を設立するに至った。

「バイトで入った筑波大生を中心とする当時のメンバーが、今の役員です。仕事があったわけではないが、人がいたから何とかなると思った」。会社の目的をハッキリさせて、それを一言で現せとの出資者のアドバイスに従い、役員みんなで社是を考えた。

それから五年。発展を続け、ついに日本証券業協会がベンチャー企業向けに用意した『グリーンシート株式市場』茨城県第一号株式公開を来年に控えて緊張感はあるか?

「設立の時から、多くの株主の出資で成り立っているので、ディスクローズの文化はもともと持っている。ただ、社会的責任は出てくるでしょうね。年々、欲が出てくるが、究極の幸せは、たくさんの人と出会うこと。そして、その出会いを形にして行きたい」。(花山亘 つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事)

【会社概要】本社・つくば市大曽根4071の1。2000年6月設立。資本金・4000万円。IT産業内におけるソフトウェアーの供給・ハイスペックPCの供給を主たる目的としたSSP(ソリューションサービスプロバイダ)。http://www.wizz-tech.co.jp/

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