![]() アプライド・ビジョン・システムズ 代表取締役・高橋裕信さん |
|
|
「3次元画像認識」、石の上にも20年
京大では生物物理、同博士課程で生物のモノを観る過程、『視覚過程』を研究。一方で、大型計算機センターに入り浸り。適性が、コンピューターじゃないのか?「実験には主にカエルを使っていたが、個体差もあるし、日によって結果が違う。その上、生き物は死んでしまう…。コンピューターは、リセットすれば実験にやり直しがきくから」。 株式会社アプライド・ビジョン・システムズを産総研発ベンチャーとして立ち上げた代表取締役の高橋裕信(一九五八年生まれ)は、二十年前、つくばにやってきた。三洋電機が、筑波博にパビリオンを出展しない代りに、全く新しいタイプの独創的な研究所を作ったのである。白物家電にこだわらず、ユニークな研究者三十人が、つくばに集まった。 地の利を得た高橋は、三洋電機からの出向という形で、極限作業ロボットプロジェクトなどで世界の最先端を走る電総研に、早速入り浸り。デビット・マーの名著『ビジョン』が出版され、『画像認識』が話題になっていた。マーは、二次元網膜画像から高次中枢における三次元形状の認識に至るまでの全体的な「視覚情報処理のシナリオ」を鮮かに描き出していた。このシナリオと高橋のカエルの解剖で培った生物物理が見事に融合した。 「高価なワークステーションを使って、結果が出るまで五分もかかるようなものが使えるのか」と言われ、「コンピュータは、もっと早くなるから…」と釈明。現在、同社取締役で産総研三次元視覚システムグループ長を勤める富田文明の元で完成させた『ステレオセルフキャリブレーション』の論文が、一九八八年『情報処理学会記念論文賞』を受賞。 コンピュータオタクとして、インターネット上で数々の伝説的なフリーソフトを世に問うた高橋だが、本業の視覚認識で実用可能な商品群にたどり着くまでに、結局二十年を要した。国家プロジェクトのリアルワールドコンピューティングが始まった時、三洋電機に頼みこんで移った。プロジェクトが終り、最後に作った『マルチメディア検索システム』が売れるまで面倒を見たいと、実施会社のメディアドライブ社に就職。二年間で、次々商品化した。 高橋たちが作った映像検索システムが、『参議院』の公式ホームページ上で稼動している。正確にキーワードを探し出して、そこから映像を再生する。当初、「映像も三十分ぐらいで、多少間違っていてもかまわない」という顧客の要求のはずだったが、だんだんエスカレートする。うまく動かないというサンプルを開いてみると、議場が紛糾してヤジが飛んでいる映像だった。議事は八時間にも及び計算パワーも足りない。「仕様外と突っぱねることもできたが、使ってもらえないシステムでは意味がない」と、一つひとつ解決。 それらの実績を背景に、旧電総研の成果が産総研発 ベンチャー開発戦略研究センター(文部科学省科学技術振興調整費「戦略的研究拠点育成」事業)のスタートアップ開発戦略タスクフォースとして採択され、自らベンチャーを立ち上げることになった。アプライド・ビジョン・システムズ社は、「人間が目で見てできる作業に共通に利用できる、世界最高水準の視覚技術VVVを提供する。オリジナル商品を市場に問うB to Cにもこだわり、『あなたのそばで』使って頂きたい。私のわがままで、安く商品化したい」と。 六本木の回転ドア事故、医療事故でも、カメラを複眼にして立体処理していれば、解決できた問題は少なくないという。「先端技術は、なかなか、人の命を助けるところまでは行かないけれど、目立たなくても、どこかで役立てたい」。 五人目の子供に重い障害があった。子供の病気に対して、研究者としての自分が、何もできなかった。献血ルームを見つけては、月二回は通っているという高橋は、「何か、直接、人の役に立っていたい」と、己の魂のバランスを保つかのように、今、ベンチャーに挑む。(花山亘 つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事、敬称略) 【会社概要】連絡先・つくば市梅園1の1の1産総研つくば中央第2。電話029・862・6562。2004年11月25日創業。資本金1000万円。画像認識およびロボティスクにかかる商品の研究開発、受託業務。http://avsc.jp サイエンススクエアつくば(展示中)http://www.aist.go.jp/aist_j/museum/sience/ | |
|
|