Voyage 代表取締役・沼尻としみさん

ネット接続1万件

ポケットマネーの5万円で会社を設立、着実に業績を上げている沼尻さん
一円でも会社が作れるという『中小企業挑戦支援法』が施行された二〇〇三年二月、Voyage有限会社・代表取締役の沼尻としみ(一九七〇年生まれ)は、そのニュースを聴いて、すぐさまポケットマネー五万円で、同社の設立申請を行った。翌月には、県内二番目の認証・確認を得て、会社設立に至ったという。

あえて会社にこだわったのは、「大手企業と対等な契約を結べること」だった。当時ブロードバンド時代の幕開けとして、ヤフーがADSL接続キットを、街中で無料配付して、その接続作業が大量に発生していた。KDDIも激しく追い上げていた。会社を作ったことで、案の定、この両社の、茨城県内の接続代理業務を、一手に引き受けることができた。

パソコンに詳しい筑波大生五人を雇い、プロジェクトチームを編成。申し込み家庭を訪問して、接続とパソコンの設定を行う出張サポート業務を開始。通信とパソコンの両方の知識がないとできない。しかも、各家庭の通信環境、パソコンのマシン環境は、それぞれ全く異なる。

しかし、一時間程度で、とにかくインターネットが使えるようにしなければならない。コンピュータ業界に、十年以上働いてきたカンで、学生達に、それぞれのパソコンの特徴を説明し、細かい設定方法を、移動するクルマを止めては、携帯で指示。同時進行で自分も作業をこなした。

「結構多いニート(引きこもり)のユーザーを抱える家庭では、ドアと床の隙間越しに、依頼者本人と紙をやりとりして、筆談で、設定条件を確認したこともあった」という沼尻は、自らも土日返上で、一日二百キロを走破し、一年間で、約三千軒を接続。Voyage社として、その年、県内一万軒の家庭にブロードバンドを開通させた。

一連のブロードバンド三カ月間無料とかの、嵐のような大キャンペーンの時期が終わり、接続業務が一段落ついた。「仕事が来ない時は、サラリーマンに戻りたいと思うことがある」という沼尻だが、ラッキーなことに、年金計算ソフトの開発の仕事が、入ってきた。週刊文春の昨年五月増刊号に『もらえるクン』という年金計算用CD―ROMを、冊子に付録として付ける事になったと、同社の評判を聞き付けた、筑波大OBの担当編集者が言った。

文藝春秋社は、コンピュータ関連出版が少なく、初めてのCD―ROM付きの出版。ネット接続で築いた筑波大生のチーム力を活かし、複雑な要素が絡み合う年金計算の一発回答システムの開発に成功。使い勝手の良さから、シャープの電子辞書の目玉ソフト『ライフサポートコンテンツ』として収録され、今春、激戦の店頭に並んでいる。

そのソフト開発力を武器に、つくばエクスプレス沿線の生活情報を載せた沿線ポータルサイト『いちさと.net』を、今月、開設した。『あいま〜る』という、登録会員が、発信先を、その都度、選択できるメーリングリストをオリジナル開発。無料で使えるようにした。さらに、安価で簡単にホームページを作成できる仕組みを搭載。あとで、ショッピングサイトや予約システムなどに発展できるように拡張性も持たせた。出張サポートで鍛えたフットワークを生かし、「すぐに、お客さんの所に飛んで行って対応できる」という。

当初就職していたソフト会社では、つくばの研究所向けの測定器とコンピュータをつなぐ仕事。「数字を相手にするより、人を相手にする仕事をしたくなった」。自分で会社をつくれば、「いやな仕事は、断れる…。幸福を感じるのは、それは仕事終えて、お金を貰った時」と、正直。「カネじゃないよと、きれいごとを言うヒトは、嫌い」。IT業界は、ホリエモン世代の台頭か。(花山亘 つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事、敬称略)

【会社概要】本社・つくば上郷1884。電話029・848・2375。2003年3月創業。資本金・5万円。IT顧問としてホームページ作成から顧客データ管理まで幅広く対応、IT社会の安心をスピーディーに実現。TX沿線ポータルサイト『いちさと.net』運営で、タウン情報提供。http://www.voyage.co.jp/ いちさと.net http://www.ichisato.net/

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