![]() 筑波バイオテック研究所 代表取締役・前川孝昭さん |
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「バイオマス」との出会いに衝撃
三十年程前、東京教育大学の助手から筑波大の講師に移る直前、新しいテーマを求めて、前川の専門の農学に関係する世界の大学を周ってみた。そして、カナダのマニトバ大学で、『バイオマス』という全く新しい言葉に出会った。牛糞からメタンガスを作る、産官学のプロジェクト方式での実証実験を、一研究室がやっている姿を見て大きな衝撃を受けた。 帰国した前川は早速、筑波大学の北の端に拡がる実験農場の一角で、国内初の小さなバイオマスプラントを作った。実験に挑む前川の研究室には、学生が寄りつかなかった。クサイからである。田舎の香水との戦いの歴史が、即ち、バイオマス実用化の歴史でもあった。 高度経済成長期の日本で、ほとんど聴いた事の無かったこの言葉が、突然、注目を集めたのは、オイルショック以降である。雨の日の夜、コッソリと近所の川に家畜の糞尿を流す農家を説得して、「その糞尿を処理プラントに持ち込めば、燃料ガスになって戻ってくる」ことを、実証し続けて三十年。「プラントの設備費は、国や自治体の補助金が必要であったが、最近、分解率の効率化が進み、ついに商業化の目途がついてきた」という。 振り返れば、ここに至るまでには、三十年の苦闘があった。資源エネルギー庁のプロジェクトとして、沖縄本島南部の具志頭(ぐしちゃん)村でホテルの人工温泉のエネルギーを作り出し、臭いが漏れ出ない事に成功。農事組合方式で、二億円の実証実験で採算に乗せた。 北海道の別海町長がこれを視察して、同町を流れる西別川流域でも実施したいと言ってきた。観光誘致を標榜しているので、家畜糞尿の臭気を無くしたいのだ。もともと、西別川は、摩周湖の伏流水のきれいな川。前川らは、ガス圧を利用した自給コントロール方式の超優れモノのメタン発酵装置を作った。 寒冷地の冬でも、無加温でメタンガスの発生ができるとの評判で、世界中から視察団がやってきた。高校教科書『植物バイオテクノロジー』(実教出版)にも、『寒冷地におけるメタン発酵装置』として載せた。前川研究室の学生数は急増。 『霞ケ浦バイオマスリサイクル開発事業』では、プラグフロー二相式メタン発酵法と電気化学的処理法を組合せたメタン発酵システムの開発を行った。肥育豚千頭分の糞尿処理を行うためのシステムの初期コストを三千万円以下にすることを目指した。さらに、三和町では、バイオエコシステム協同組合と、発展的なプロジェクトを展開している。 「多額の税金を使って研究してきたので、実用化して、その恩返しをしたい。地球温暖化防止の意味も込めて…」と、昨年五月、筑波大発ベンチャーを、現役の教授が社長となる、初めてのケースとして設立。「一年目を何とか黒字化するために、授業との両立が大変だった。特に土日が…。ただ、学生には、具体的な話を、説得力を持って説明できるようになった。米国の大学の工学系では、実用化の検討がなされないと評価されない」のだと。 『カーボンニュートラル』(脱炭素)というテーマを追求しなければ、人類の持続可能な発展はあり得ない。原始的な菌を使っているが、結果的に面白いことになった。エンジニアリングとしても、コントロールできる範囲に入ってきた。今後、このメタンガスから水素を得て、燃料電池の燃料とする脱炭素社会への飛躍の可能性もある。「ビジネスも教育もユーザーが満足を得て、感謝される商品を作らないと生き残れない。コレを使って良かったなと言われるのが一番。だから僕のモットーは感謝なんですよ」と明るく答えた。 (花山亘 つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事、敬称略) 【会社概要】つくば市西大沼の台264の1。電話029・839・1850。2000年5月7日創業。資本金300万円。生物資源のバイオマス変換物質の開発と利用。関連プロジェクト「霞ケ浦バイオマスリサイクル開発事業」。http://www.i-step.org/kasumi/ | |
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