イーストレージネットワークス株式会社 代表取締役・高橋宏尚さん

ビジネスという名の“レース”

VCの出資で画期的なディバイスを開発、8月から発売開始し、世界を「行商」して回る予定の高橋さん
すっかり“レース”から遠ざかっている。「VC(ベンチャーキャピタル)からの出資を受け、契約条項に“危険行為の禁止”がありましてね…」と苦笑した。F4のカーレーサーとしてかつて全日本チャンピオンでもあったイーストレージネットワークス株式会社代表取締役・高橋宏尚(一九五九年生まれ)は、ビジネスという名の“レース”を静かに語り始めた。

社名の“ストレージ”とは、英語の倉庫の意である。米国では、トランクルームビジネスが数千億円の巨大産業に成長しているというが、ここでいう“イーストレージ”とは、コンピュータの情報格納技術のことである。“情報倉庫”とでも言うべきデータ・ストレージ、ディスク装置などでコンピュータの性能をドラマティックに向上させ、暗号技術も含めデータセキャリティを向上させる。IT分野のハードとソフトの間にある新しいマーケットだ。

元々の専門は、アモルファス半導体。現在も理科大では、DTS技術の研究を行っている。インテルの専門代理店に入った。次に、インテルのシステム部門とコラボレーションしていた富士通のオープン系の代理店へ。当時、日本でUNIX系のコンピュータを普及させるには、グラフィックスのレンダリングエンジンの開発が急務と考え、日本総研と組んで、『オープンGLジャパン』を、一九九三年初代幹事として立ち上げた。

市場を作るためのプロモーションの勘所を高橋は心得ていた。ハードメーカー各社に賛同してもらって、人脈も出来た。成果として『日の丸三次元レンダリングチップ』ができた。レンダリング(データの可視化)とは何をすることなのか本質を考えてやった。そこから生れたガリウムヒ素チップを使ったスパコンを米国に売り込みに通っている中で、アンダーセンコンサルティングのレップ(日本代表)をやる話が決まった。

そんな時、アトランタの会社社長の友人から、高橋のファミリーごとオリンピックに招待された。オリンピックを見ながら、新型のディスクアレイ装置を作ったその会社のアジア地区の代理業務をやってくれと言われたが、「いっそ自分で起業するので、アライアンス(提携)でやろう」ということになった。

「真剣勝負できない。給料が決まると、安心してしまう」から。下町生れの江戸っ子だが、職住接近でジックリ取り組みたかった。東京より家賃が安いと考えて、インテル関係でよく行っていた、つくばで創業。

データトランスミッションシステム(DTS)とは何か。クルマに例えるとエンジンはCPU。しかし、クルマは道路に接しているタイヤを通じてのみ走る事ができる。エンジンがいくら速くなっても、タイヤにエンジンの力を効率的に伝えなければ上手く走れない。つまり、トランスミッション・ギアにあたる技術が同社の命。関係する要素の最適化を図る。特に、データアクセスの効率を最大化するストレージ部分が重要だ。インターネットの普及や携帯の発達などで、サーバーへのアクセスの急増など、ニーズが急速に高まっている。

VCの出資で画期的なディバイスを作った。オールインワンの三・五インチハードディスク標準サイズで80Gを達成。アクセス性能を十倍から百倍の処理速度を実現できるのだ。パソコンに入れて、普通に使える。自動学習機能でデバイスチップを使って、高速コンピュータに成長する。コンピュータのミッションが入っていて、メモリーからメモリーデータ転送を、自己学習しながら最適化するのが『Mセル』。セキュリティーの方は『Sセル』。ハードウェアでコントロールしているので、チップでフィッシング詐欺も防御できる。

八月にはいよいよ発売。これから高橋が世界を“行商”して回る。「本当に幸せな時には、幸せであればあるほど、その場で気がつかない。振り返ってみて幸せでいることが判る。良い事も悪い事もプロセスだと思えばハッピーなんだ。次のカードをめくってみないと結果は判らない」と。生きてさえいれば、次のカードをめくるチャンスはあるのだから…。(花山亘 つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事、敬称略)

【会社概要】つくば市自由が丘824の66。電話029・876・6821。1996年9月創業。資本金1億1400万円。ストレージ関連技術の開発(DTS)、セキュリティソフトウエア開発(DSL)。ERPソリューション、システム設計、導入作業、保守サポート。ストレージ関連ハードウェアおよびソフトウェアの輸入、販売。http://www.estoragenetworks.co.jp

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