![]() ソムノニクス 代表取締役・谷川武さん |
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「ベッドの海」におぼれるな
一晩中ベッドという名の海におぼれそうになって朝起きれば、当然のことながら疲れ果て、日中は猛烈な眠気が襲ってくる。二〇〇三年二月に起きたJR山陽新幹線運転士の居眠り運転事件の原因が、重度の睡眠時無呼吸症候群(SAS)によるものだと判明。「この病気に悩む、我が国の潜在的SAS患者は、二百万〜三百万人はいる」という。SASは高血圧の原因にもなり、不整脈、脳卒中、心筋梗塞のリスクであるとの報告もあり、過労死の一因としても注目されつつある。しかし、患者の多くは「最近年とともに疲れが溜まってしまって、集中力が欠けてきたかなあ…」と、眠気を慢性疲労と誤認して、専門医に受診しない。 学生時代から十〜十五キロ以上太った人がかく大きなイビキが赤信号。のどの周りに脂肪が付き、睡眠中に軟口蓋や舌根が垂れて上気道を塞ぐのである。カーッ、カッというそのイビキは独特で、「怪獣と暮らしていたようであった」と、あるSAS患者の妻が、夫のイビキについて述べた例が、『労働衛生管理』の谷川の論文に載っている。 一九九八年からは、シーパップ(CPAP)療法という鼻マスクを介し気道内に陽圧をかけ、気道の閉塞を防ぐことにより、無呼吸を取り除く療法に保険が適用となり、手軽な医療装置で自宅治療ができる。そのためには、病院に一泊して、睡眠中のポリグラフ(PSG)検査を受けることが必要である。しかし、我が国では、PSG検査が実施できる医療機関がいまだ少なく、検査待ち数カ月が当たり前となっている。そこで、谷川たちは、鼻と口の気流を測定することによりSASのスクリーニングを行う簡便な機器を用いたシステムを開発した。オリジナルの問診票と組み合わせた『ソムニー』というスクリーニングを企業、自治体で実施し、重度の睡眠中の呼吸障害が疑われる場合に速やかに医療機関に紹介し、脳波測定を省いた『簡易PSG』を行い、保険によってシーパップ治療を受けることが可能となる。 そもそも、筑波大学に赴任した谷川が、この問題に気付いたのは、一九九九年にハーバード大医学部睡眠医学教室の客員講師として米国の睡眠医学に触れた時である。当初SASは、米国特有の肥満者の疾患としてあまり興味が無かったが、昼食の時レストランでよく出会う隣の研究室の日本人留学生から、「おもしろいから一度見に来ないか?」と言われたのが、切っ掛けだった。「米国の睡眠医学会でSASが重要問題として国を挙げて取り組まれていること、日本人は顔面骨格上の特徴から軽度の肥満でもSASが起こりうること」を知った。 帰国後フィールド研究を重ね、「わが国のSASの有病率が予想以上に高いこと。簡便なスクリーニング検査による、睡眠中の呼吸状態の悪化と血圧の関連。飲酒と睡眠中の呼吸状態の関連。交代勤務と睡眠呼吸障害の重複が高血圧を招く危険性」などを次々と論文発表。 現在、谷川が主宰するNPO法人睡眠健康研究所が全日本トラック協会の指定機関となり、二万人のトラック運転者を対象としたSASスクリーニング検査に取り組んでいる。「トラック運転者の5%がSAS患者であり、健常者の五倍の確率で交通事故を起こすと仮定すると、早期発見早期治療によって従来の交通事故の17%が抑制できる」と、谷川は試算する。廉価なスクリーニング検査を全国に普及し、医療機関への受診につなげることの重要性を痛感。筑波大の今年度ILC創業支援プロジェクトに採択され、ソムノニクス株式会社社起業へ。 怪獣と思えた夫が、そのスクリーニング検査を受けた後、医療機関に紹介されてシーパップ療法を開始した時、妻は、「夫があまりに静かに寝ているので、死んでいるのではないかと、夫を揺り起こした」という。元気を取り戻した六十六歳の夫との夜の夫婦生活も復活…。(花山 亘 つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事、敬称略) 【会社概要】つくば市吾妻3の7の15。電話029・861・8581。2005年7月11日創業。資本金1000万円。睡眠時無呼吸症候群スクリーニング検査システムの開発と普及。 http://www.somnonics.co.jp/ 関連団体・NPO法人睡眠健康研究所 http://plaza.umin.ac.jp/sleep/ | |
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