田園プラン 代表取締役・根本健一さん

「農閑商渡世」、地域を蘇らせる

根本さんの活動は「ベンチャーよりカルチャー」を感じさせる
TX開業の今年の夏、早速放映された『ぶらり途中下車の旅』(日本テレビ)で、根本の実家を改造した、古民家レストラン『ルーラルハウス吉瀬』が取り上げられた。「電話が、引っ切り無しですが、実際は、ブラリとは来られなくて、つくばセンターからタクシーかバスに乗ってくださいと言うしかなくて…」。申し訳なさそうに頭をかく、株式会社田園プラン代表取締役・根本健一(一九五三年生まれ)のスタートはホテルマンである。

美大に進んで絵描きになろうと考えたが、「家族の大反対に遇い、次に選んだのが当時開校したばかりのホテル・観光専門学校だった」のだ。ここで学んだ、ホスピタリティの考え方が、根本のグリーン・ツーリズムの原点となった。グリーン・ツーリズムとは、ヨーロッパで普及した長期バカンスの旅のスタイル。ひいきの場所にジックリ滞在し、田舎暮らしを体験する参加型にディープな魅力がある。

京成グループに就職し、ホテルのフロントを務めたが、三年後、経営学を学びに再び大学へ。つくばセンタービルのホテル構想に関わりたくて、つくばプロジェクトのディベロッパー・筑波新都市開発(株)に新卒で就職。一方で、学園のサークルに入って再び絵を描き始めた。

発表の機会がないというので、名主をやっていた旧家・根本家の長屋門を改造して、恵風画房として、愛好会の仲間に開放したところ大好評だった。文化の香りが無いと言われた、殺伐としている筑波のニュータウン計画の中で、吉瀬に足を運んだ新住民達が、「筑波にも、良い所あるじゃないか…。癒される」と、とても評判が良かった。

根本は、「待てよ、農村はただ農業をやる場だけではなく、別のビジネスの環境にもなっていくのではないかという、漠然としたイメージを持った。そのころ、ヨーロッパでグリーン(ルーラル)・ツーリズムが農村経済を嵩上げしているという本にも出会った」。クレオショッピングセンターの開店まで見届けて、万博開幕前夜、思い切ってサラリーマンを辞めた。「教員をやっている家内には大反対されたが、結局二〜三年は、髪結いの亭主となり食わせてもらった」

最初にやったのが、レジャー系キャンプ場『フォンテーヌの森』。これが当たった。万博終了後、東京からのクルマのアクセスが整備されていたので、キャンプの大衆化時代にマッチした。数年後、アウトドアブームが訪れ、ピーク時は、年間三万人の利用があった。根強い人気があり、オートキャンプ場が普及した現在でも、リピーターを中心に他の施設も合わせると今も同数の人が、つくばから土浦に向かう中間点の里山・吉瀬を訪れる。根本のホテル運営のノウハウが、見捨てられていた地域の土地を蘇らせた。

「この地域に伝わる出稼ぎ対策の農民のしたたかな生き方、農閑商渡世(のうかんあきないとせい)は、建築史の一色史彦先生から示唆を受けた」考え方。例えば、手仕事として、笠間から作家に来てもらって、陶芸教室や体験をやっている。

もてなし処としてのルーラルハウス吉瀬では、昼の松花堂弁当と夜のパーティー。研究者に人気で、送迎バスで研究所への送り迎えをしている。

農家にとっての三つの仕事「野良仕事」「山仕事」「手仕事」の内、最後に残った原点「野良仕事」もついに開始。農業法人『つくばファーム』を設立、ブルーベリーを栽培。県北の木内酒造で一本千円のブルーベリージュースに加工し、販売。

最近は、つくばに残る歴史的な建物の再生活用にも奔走する。「ベンチャーよりカルチャー」を感じさせる。「キャンプに来た子供たちが眼を輝かせているのを見る時、そして、その家族連れから、良い所ですね! と言われる時が、一番嬉しい」。既に、数十万人に達した顧客名簿がある。忙しい時には、受付のスタッフ役もこなしてくれる常連がいるのだ。(花山 亘 つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事、敬称略)

【会社概要】つくば市吉瀬1679の1。電話029・857・3355。ファクス029・857・3927。1985年3月創業。資本金1000万円。農村自然休養村・ルーラル吉瀬(農家レストラン、ブルーベリー農園、キャンプ場、陶芸工房など)の自社施設の運営とグリーン・ツーリズムを追求した企画の実施。他にモービルホームの販売など。http://www.rural.gr.jp/

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