![]() モルラボ 代表取締役社長・坂口豁さん |
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ハイテク石鹸の使い道
「何をやれば、実際に使えるようになるか、マーケティングを学ぶしかない。これから、三十年やるつもりです。僕は、駆け出しですから…」と語るのは、産総研発ベンチャーの有限会社モルラボ代表取締役・坂口豁(一九四三年生まれ)である。 坂口が世界に先駆けて開発した『ドデカン酸リチウム長繊維状結晶』を用いると、自重の五倍の重量のトリクロロエチレンを水中で固形化し除去できる。大量生産に成功すれば、タンカー事故などで原油が流出した時の処理も可能となる。繊維状の活性炭で取るとすると、最初はもっと完璧に除去できるが、すぐに破荷して、全然取れなくなってしまう。 坂口の技術は、90数%は取るが、少し残る。しかし、十cに対して五十cは楽に取る。ケタ違いに汚れを取る。完ぺきには除去できないので、使い方を考えているのだ。温めると繊維と油分が分離するので、再び使える。何度も使える、一種の化学フィルター。 二年前に六十歳の定年を迎え、非常勤の研究者として産総研タスクフォースの制度を利用して準備してきた。それまでは、約三十年間に渡って製品科学研究所等で研究生活を送る。いろんな、両親媒性物質に興味を持つ。両親媒性物質とは、水と油の両方の媒体に親しむ物質。両親媒性物質の助けを借りれば、例えばベンゼンとかパラフィンのようなものも、ただの油の固まりではなく、綺麗に揃った状態を水の中に作り得るのではないかということを夢想した。 油と水は本来混じり合わないので、水の中に分散された油は、行き場所を失って、お互いに液体として上下に分かれてしまう。このとき、固体状態で水の中に安定に存在できる油の寄港地、両親媒性物質の結晶を、とまり木のように入れてやると、油が安心して結晶の周りに集まり、あたかも固体のようになる。このとき、周囲の水が、油の集合を助ける。五倍の重量のトリクロロエチレンが集合した「固体」は、ピンセットでつまむことも出来る。これが坂口のハイテク石鹸ということになる。 「僕がそう言う現象を研究して分子間力がどういう風にお互いに働くとか、水の中でどうやって集合体がどうできるかとかを明らかにすれば、きっと誰かが、社会に役立てる方法を考えてくれる」と思っていた。特許も出したし、論文にして学会でも発表し、スゴイとか、面白いとか言ってもらった。しかしながら、それ以上には進展しなかった。 「産総研ベンチャーセンターが呼んだイギリス人コーディネーターに話したら、興味を持ってくれた」のが切っ掛け。産総研発ベンチャーのタスクフォースとして採用してくれたのだ。初歩的原理としては他で考えつかない面白い物だが、メーカーはなかなか商品化してくれない。自ら会社を作って商品化するしかないと決断した。 世の中に役に立つように、出そうと思っている。思ってはいるが、実際のプラントのどの部分にどんな格好で入れれば良いのかが分からない。具体的な商品化の議論が必要なのだ。 実験の補助から経理まで何でもできるテクニカルスタッフを、一人だけ雇った。商品の捕集材まで、モルラボ社で作るか、メーカーとコラボレーションするか、手順は勉強中。基本的には、ストーリーを全部自分で考えなければならない。 先月、退職金一千万円を使ってモルラボ社を設立し、決意だけは見せた。「今まで、研究に使ってきた税金に比べれば、大したことはない」。産総研内の研究室の部屋代も光熱費も備品も全て、会社設立してからは有料となった。「それでも、恵まれている」。「年金だけは残しておいて、後は全てつぎ込むつもり」だ。売上の目途は、まだ無いが、五年以内に自分で実験室を作って産総研から出なければならない。坂口のマラソンは、始まったばかりだ。 (花山 亘 つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事、敬称略) 【会社概要】つくば市東1の1の1産総研つくば中央5―2内。電話029・850・1452。2006年4月創業。資本金1000万円。塩類、界面活性剤、カルボン酸金属塩を主体とした化学品等の事業化。特に、ドデカン酸リチウム長繊維状結晶を用いて、5倍の重量のトリクロロエチレンを固形化する世界初の技術の商品化を目指す。http://www.mol-labo.jp/ | |
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