![]() SOE建築設計事務所 代表取締役・副厳宏さん |
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「飛込み営業」の極意
「こうなったら、独立して、いつかこの会社を下請けに使って見せる…」と、負けてなるものかのルサンチマンの心情が沸き上り、退社。 地元土浦の設計事務所に再就職し、地道に設計の実務を積み、一級建築士免許を取得すると同時に独立した。有限会社SOE建築設計事務所・代表取締役・副厳宏(一九五七年生まれ)に、元祖「脱サラ人生」を訊いてみた。 TXのつくば駅と研究学園駅を繋ぐ、学園北大通りの延長線に面したSOE建築設計事務所の自社ビルの一階は、半分が大型のコインランドリーになっていた。毛布なども丸洗いできるので、学生たちだけでなく、地元の奥さんたちが利用してくれる。 「お客さんが、野菜などお土産に持ってきてくれるんですよね…」と、副が、面倒見の良さそうな笑顔で迎えてくれた。事務員の女性が管理しているというコインランドリーの売上も、自社ビルの償却には役立つのだと、その堅実さを伺わせる。 独立して最初は、どうやって仕事を受注するのか?「営業もした事がないし、とにかく飛込み営業です。工務店、テナント主、地主など、当てもなく何度も訪ねて行くんですよ」。自動車や保険の営業ではないが、「設計の飛込み営業」で仕事を取ってきたという。 ある時、工務店から受注した衣料品の店舗設計をやったが、突然のその工務店が連絡不能となり、事務所に駆けつけた時には、既に社長が夜逃げした後だった。債権者の渦の中に入って行ったが、「設計料など、高が知れているだろう!」と弾き跳ばされた。 独立して間もない副にとって、しかし、その設計料は、資金繰り上どうしても必要なモノだった。数日間悩んだ挙げ句、倒産した工務店に仕事を発注していた施主の衣料品チャーン本社を訪ねた。 「当然孫請けだから正規には設計料を要求できない事は充分承知だし、どんなトラブル巻き込まれるかもしれないし、本当に勇気がいりました…」 捨てる神あれば、拾う神ありなのである。つくばにある、その新進気鋭の衣料品ベンチャー企業の社長は、しばらく考えた後「確かに、その工務店は連絡不能だ。ウチは既に、設計料を支払った後で、どうすることもできないが、今後、ウチの仕事を御社に直接発注しよう」と言ってくれたのである。飛込み営業で鍛えた、副の精神構造が可能にした技かもしれない。 その衣料品販売ベンチャー企業が、一部上場を果たし、商業施設に入居するのが当たり前になるまでは、数えられない程の店舗設計の仕事を受注した。救ってくれた社長に足を向けて寝られないという。一方バブル崩壊時には、アライアンスを組んだマンションデベロッパー会社の倒産のあおりを食ったりして、面倒見の良さが裏目に出たこともある。 苦境に陥ると、再び「飛込み営業」の本領を発揮した。大手コンビニの茨城県進出に伴い、店長募集の広告を見て、もちろん、店長応募ではなく、店舗設計の受注を希望し、本社に飛び込んだ。今では、そのコンビニが店舗を開く場合、ほとんどSOE建築設計事務所が設計・監理を担当している。 「自分がこければ、両親までも否定されてしまう」との強い思いが、現在の自分を作ってくれたと、副は振り返る。永年、地元で地方議員を務めた父の元には、いつも地域の人々から相談事が寄せられた。黙って耳を傾ける父の後ろ姿を見ながら育った副の夢は、つくば市の街づくりに自分の培ったノウハウを生かすことだという。 (花山 亘 つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事、敬称略) 【会社概要】つくば市春日2丁目25の5。電話029・858・3333。1984年8月1日創業。資本金・300万円。商業施設等の建築・設計・監理。 | |
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