プロンテスト 代表取締役・奥村真知さん

「R」と「L」との違い

奥村さんの制作した英語発音矯正ソフト・パイロット版が青山学院大で英語の講義に採用され、その後、いくつかの大学などで採用が検討されている
「海外のレストランで、ライス(Rice)を注文したらノミ(Lice)と間違えられた」と言う話は、ホントかなと思いながらも、日本人の英語発音の問題点を指摘するジョークとして、常に引用されるエピソードである。

「LとRの発音では舌の位置や動きが違うのはよくわかっている。でも、いざやってみると正しく発音できているのか分からない…」と、解説してくれるのは、産総研発ベンチャー、株式会社プロンテスト代表取締役の奥村真知である。

ロンドン大学において音声学を確立したダニエル・ジョーンズ博士の提唱する音声学の系譜を、奥村は大学の英文科で学んだ。「発音する時の、口の中の様子を解析する学問」だという。その後、家族の都合で米国に滞在。学んだ発声学を、現場レベルで実感した。帰国して、英語の講師として、日本人の発音矯正に挑んだ。

その後、つくば市に転居することになった一九八七年当時、奥村の勤めていた英語学校のブランチは、つくば市内には、まだなかった。英語講師を続けたかった奥村は、「それなら、自分でやってしまえ」とばかりに、自宅近くの事務所を借りて、小規模の英会話スクールを始めた。

『ベアーズ英会話スクール』が、奥村の創業であった。当時は本格的な英語塾が無かっただけに、奥村の英会話スクールは、教室を増やし、快進撃を続けた。二〇〇〇年には、ベアーズコミュニケーション社として法人化も果たした。しかし、急拡大と大手英会話スクールの進出、パソコンスクールの台頭とが相まって、業務縮小を余儀なくされた。

そこで、奥村が取った方策は、「選択と集中」。自分の得意分野、「発音の矯正」を事業の中核に据えた。「二〜三カ月、キチッと指導すると、ネイティヴとはいかないまでも、見違えるように発音は良くなる。発音できるということは、ヒアリング能力も同時に向上するので、研究者が国際学会などでの英語の質問にも、自信を持って対応できるようになる」と。

しかし、「発音を調音レベル(舌や歯などの位置関係など)で細やかに指導できる講師は、極端に少ない。しかも、発音というのは、調音器官の形にも深く関係するし、訛(なまり)にも似た極めてプライベートな事柄なので、教室で他人がいる所よりも、自宅でジックリ取り組むべきテーマ」だと、奥村は考えていた。

英語発音矯正のためのプログラムを自宅学習ソフトにできないかと考えた奥村は、つくば研究支援センターのコーディネーターと出会い、(独)産業技術総合研究所の音響分析や音声認識の専門家たちを紹介された。そこから奥村の新しい大きなチャレンジが始まった。

英語教育の現場を持つ奥村が吸い上げてきたテーマと奥村自身が担当する音声分析を基に、産総研の研究者たちが音響分析をする。このコラボレーションを進展させるため、会社を組織変更して、発音の意から命名したプロンテスト社にし、資金提供型の共同研究を開始。二〇〇五年十一月、共同研究終了後、さらに(独)産総研技術移転ベンチャーとして認定されると、産総研内の情報技術共同研究棟に入居した。

そして、いよいよ今年度から、共同研究の成果を製品化した英語発音矯正ソフト『PRONTEST CALL』のパイロット版が青山学院大で、英語の講義に採用された。コンピューター相手に話しかければ、自身の発音を音響学的に分析してくれ「舌を口の中の天井につけてはいけません」とか「唇をもう少し丸くして発音してください」と、できるようになるまでパソコンが細やかに指導してくれるのだ。その後、いくつかの大学などの教育機関への採用が検討されている。

「口は世界共通の楽器だから、どんな音も誰にでも出せるはず」と言う奥村の発想は、「一人で走ってもつまらない」というチームワーク重視。どのような形の商品として提供するか、研究開発とは別のプロジェクトチームを組んで検討中である。「発音矯正ソフトが完成し、世に貢献できたら、関わった人すべてに集まっていただき、感謝の宴を開きたい」と思っている。そして、そのときの乾杯の情景を夢に描きながら、奥村は、時にはくじけそうな自分を励ましているのだという。
(花山 亘つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事、敬称略)

【会社概要】つくば市梅園1の1の1(独)産業技術総合研究所 つくば第2事業所部・情報技術共同研究棟4階。電話029・855・6188。1988年創業。資本金・8700万円。英語発音を、発音器官レベルで矯正するソフトウェアの開発。英会話スクール事業。http://www.prontest.co.jp/


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