![]() ディナベック株式会社 代表取締役社長・長谷川護さん |
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遺伝子治療最前線
大賞に輝いたディナベック株式会社代表取締役社長・長谷川護(一九四四年生まれ)は「開発に成功したセンダイウイルスベクターは、一九五三年に東北大学で発見されたセンダイウイルスの弱毒株を元に、不要な遺伝子を取り除き、ヒトに投与できるように改良したベクター。細胞型RANベクターと呼ばれ、従来の細胞核内部で遺伝子発現を行うDNA型とは異なるものである。遺伝子を細胞内に送り込む効率が高く、核内の染色体を改変するリスクが原理上存在しないので、安全性にも優れているとされ、幅広い疾病への応用可能性がある」と受賞の喜びを語った。 一九九五年から九年間で約八十億円を掛けた、厚生省と製薬会社七社の官民連携の国家プロジェクトである株式会社ディナベック研究所で開発された「センダイウイルスベクター」の卓越性を、長谷川が淡々と説明してくれた。 この分野で、国内製薬会社では一歩先んじてきた協和発酵工業(株)からプロジェクトリーダーを出すとの官民の了解があった。都下町田市で協和発酵の医薬品開発のための標的遺伝子の探索研究をしていた長谷川に、国家プロジェクトのリーダーの役割が、突然回ってきたのは、五十歳のときであった。白羽の矢が当たった長谷川は、早速、つくばに通いやすい松戸に引っ越した。 製薬各社から出向してきて来た十四人の研究スタッフが、つくば市観音台に結集。それぞれ、全く異なる企業文化の中で仕事をしてきた猛者たちを取りまとめていかなければならない。長谷川のフィロソフィーは、「打ち上げ式」であった。寄合い所帯にありがちな、コンセンサスをとりながらダラダラとテイクオフしていくのではなく、共通のテーマを決め、一気に立ち上げて成果を出そうと言う訳だ。そのためには、最高のターゲットを見付け出さなければならない。長谷川たちの格闘が始まった。 =次回に続く= 遺伝子治療最前線
初めて国の立場に立った長谷川は、その立場をフル活用し、さまざまの研究者を次々とつくばに呼んで勉強会を開いていった。そこで、出会ったのが東大医科研の永井博士のセンダイウイルスの再構成技術であった。「ベクターに使える!」、と長谷川たちは直感した。しかも海外にはない概念のベクター。非常に性能の良いベクターを手に入れることは、フェラーリに乗るようなものだ。 遺伝子治療は遺伝子そのものだけでは治療効果が得られず、遺伝子を患者の細胞の中に運ぶ「運び屋」、ベクターが欠かせない存在になる。感染力の強いウイルスの持つベクターを上手く使って、治療用遺伝子を特定の臓器・組織に運搬し、効果的に標的細胞内へ導入することが最重要だ。微生物の力を最大限生かすのだ。 そもそも、目に見えない微生物の世界に、長谷川少年が夢中になったのは、小学生の時だった。ある日、学校の廊下に、単眼の片手に収まるほどの小さな顕微鏡を売るおじさんがやって来た。「戦後の牧歌的なまだ自然の残る練馬の小学校でした。だまされたと思って買ってみて、その辺の水溜りから取った一滴の標本を垂らして覗いてみる、信じられない程の微生物がうごめいていたんです」。この日から、長谷川の人生は変わった。東大に進学して、生化学を学び、協和発酵に就職したのだ。 現在、長谷川たちは、基礎から製造まで、七十件の特許を世界各国で申請している。二〇〇三年に、国家プロジェクトの成果を実用化するための新会社、ディナベック株式会社を設立するに当たり、長谷川は、協和発酵も退社。いよいよ、今年七月からは、九州大学病院において臨床研究が開始された。 「世界中で既存ベクターの改良や用法の工夫に関する研究が盛んになされていますが、その中でも、当社のセンダイウイルスベクターは、治療能力や安全性の面で既存ベクターの欠点を大きく解決できる性能を有していることが動物実験等で証明されており、ベクターの世界標準となる潜在力を持っています」と、抱負を語る。 「難病と闘う一人でも多くの患者の皆様と、その支援者の皆様のお役に立つこと、また、広くバイオビジネスに貢献していくことを、最大の喜びとしております」というディナベック社の思いが、現実のものとなるか。そして、遺伝性疾患、アルツハイマー、エイズやSARS等の感染症、さらには脳腫瘍など多くの難病を、細胞レベルから治療していくという長谷川たちの試みが、医薬の新時代を築くことを期待したい。 (花山亘 つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事、敬称略) 【会社概要】〒305―0856、つくば市観音台1―25―11。 2003年9月設立。資本金20億7915万円。事業は、自社ベクター技術に基づき遺伝子治療製剤開発、遺伝子ワクチン開発など遺伝子医薬品開発を中核事業としながら、組み換えタンパク製造、遺伝子・タンパク質の機能解析などのバイオ事業を多面的に行うこと。また、プラットフォーム技術としてのベクター技術の開発を行うこと。http://www.dnavec-corp.com/ | ||
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