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経済評論家 杉田暁
日本経済の歪み露わ
常識外れのマイナス金利
お金を借りたら、銀行が利息を付けてくれる―。そんな「うまい話」があれば、すぐにでも融資を申し込みに、銀行に走りたい。ところが、金融のプロの世界で、借り手が利息を受け取るマイナス金利の取引が常態化している、というから驚きだ。

金融機関が短期間、お金を融通しあう場のことを「コール市場」という。そこで行われる代表的な取引が、今日借りて明日返す無担保コール翌日物の貸し借り。東京コール市場では、今年の1月25日にこの取引で、初めてマイナス金利が出現して以降、頻繁に金利がマイナスになっている。

なぜ、このような常識外れが横行するのか。一言で言えば、利息を払って貸した銀行も、ちゃんと儲けているからである。しかし、何らかのカラクリがあるはず、と考えるのが普通だろう。

その通り。タネも仕掛けもある。そして、答えを探ると、日本経済が抱える問題に行き着く。

日本の銀行(邦銀)は、輸入業者が支払うドルやユーロを用立てる必要があるが、手元に十分な外貨を持っていない。そこで、外国の銀行(外銀)に円を預けてドルなどを調達する。ところが、邦銀は信用されていない。隆々たる本店を構えている大銀行であっても、不良債権の処理に汲々としている現状では、外銀からすると、円と引き換えに貸したドルを返してくれるかどうか、心配があるので取引を渋る。

どうしてもドルが欲しい邦銀は、しょうがなく円に高い金利を付けて差し出し、ドルを分けてもらっている。外銀に足元を見られているわけだ。

さて、円を手にした外銀Aは、他に使い途がないので、金利ゼロでも安全な日銀に預けていた。しかし日本は、経済が低迷し、財政事情も悪化の一途を辿っているため、本店が「日銀といえども返済能力に疑問がある」として、日銀に預ける額に上限を設けるようになった。そこで、日銀への預け入れ枠の上限以上の円を抱えた外銀Aは、預け入れ枠に余裕のある他の外銀Bを探し、「利息を払うのでお金を預かって下さい」と頼むことになる。保管費用を考えると、その方が割安だからだ。

借りて利息が入る外銀Bは、もちろん利益を得る。貸して利息を払う外銀Aは、その取引に限れば損だが、邦銀にドルを貸すことで十分な利ザヤを稼いでいるから、トータルでは得している。誰も損していないのだろうか。

そうではない。そもそも、不利な条件でドルを調達した邦銀が損を被っている。そして、これが回りまわって、預金者、融資先、さらには多くの銀行に公的資金が注入されていることまで勘定に入れると、納税者の負担増加につながる。

マイナス金利自体は「国富の流出」と、目くじらを立てるほどのことではないし、奇妙な現象として笑い飛ばして構わないのかもしれない。しかし、そこには長引くデフレ、絶望的な規模に膨れ上がった財政赤字といった日本経済の歪みが、はしなくも露わにされている。




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