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経済評論家 杉田暁
混乱招く軽減税率
消費税はシンプルに
政府税制調査会の石弘光会長(一橋大学長)が、将来、消費税率を引き上げたとしても、食料品の税率は5%に据え置く方針を示した。こんな大事な話を簡単に決めてしまっていいものか。

政府税調は6月に出した中期答申で、現在5%の消費税をいずれ2ケタにする必要があると訴えた。この増税路線に、各方面から反発の声が上がっているが、筆者は消費税引き上げには反対しない。本格的な少子・高齢化時代の到来と巨額の財政赤字を考えると、やむを得ないからだ。その前提として歳出カットが必要だし、景気への影響を慎重に見極めなければならないが、この議論は別の機会に譲り、ここでは見落とされがちな「軽減税率」の問題を指摘したい。

現行消費税率は一律5%。仮にこれを10%にした場合でも、食料品への課税は5%のままにするというのが、石会長の考えだ。消費税は所得の多寡にかかわらず掛かるため、低所得層ほど重税感が高まる「逆進性」という性質を持つ。だから、生活必需品である食料品の税率は低めに抑えて低所得層への打撃を和らげようというのだ。

一見、もっともな議論だが、大きな落とし穴がある。例えば、金持ちにしか買えない高価な健康食品、ぜいたくな大型犬用のドッグフードの税率を優遇する必要があるのだろうか。ペットフードは軽減対象から外すのだろうが、牛肉を人間が食べるのかシェパードに与えるのか、売り場ではチェックできないし、人間も食べられるペットフードが売り出されるかもしれない。

食料品だけでも、多くの問題があるが、税調の中期答申は、軽減税率の対象を「食料品等」としている。この「等」が曲者。何が生活必需品なのか、人によって考え方は異なる。政治家や官僚が介入してくるのは、間違いない。

消費税を導入する前の物品税が同じ問題を抱えていた。30年以上前に流行った「黒猫のタンゴ」というヒット曲を覚えているだろうか。この歌を巡っては、歌謡曲か童謡かでレコード会社と国税当局が論争した。童謡と認定されれば非課税だからだ。結局、「黒猫のタンゴ」は歌謡曲扱いにされたが、「およげたいやきくん」は童謡の認定を受けた。両者の運命を分けた基準は不明確だ(「黒猫」をひらがなにしていれば童謡だったのだろうか)。

消費税はシンプルが良い。逆進性の緩和は、消費税の軽減税率ではなく、所得税や相続税の見直しで図るべきだ。




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