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経済評論家 杉田暁
金融界、9年間の苦境
稼いでも不良債権のヤマ
大きく報道されなかったが、八月中旬に注目すべき資料が発表された。日銀が集計した大手銀行、地方銀行、第二地方銀行などをひっくるめた全国百五十六銀行の二〇〇二年度決算がそれだ。そこからは、日本の金融が病んでいる様子が見て取れる。

経常損益、最終損益はそれぞれ総額四兆八千億円、四兆九千億円という、とんでもない規模の赤字。しかし、不感症になってしまったからか、この数字には驚かない。事実、前年度と比べると、赤字額は経常、最終いずれの段階でも減っている。

赤字額そのものより注目されるのは、不良債権処理額が六兆六千億円と、業務純益(本業の儲け)の四兆七千億円を上回ったことだ。この状態は、今回限りのことではない。一九九四年度以来、実に九年間も続いている。過去に行った投資の失敗のツケを清算するため、稼ぎが全部消えてしまっている格好だ。

これを家計に例えてみよう。バブル期に銀行でローンを組んで買ったゴルフ会員権が、紙屑同然になってしまった。といって、借金は残る。一生懸命稼ぎ、生活を切り詰め、手元に残った可処分所得をすべて借金の返済に充てても足りない。

そこで、親が遺してくれた土地を切り売りしてお金を工面し、何とか破産を免れている。幼稚園に通っていた子供が、高校を受験する年齢に達するほど長期間、綱渡りのやりくりをしているようなもの。こんな生活をいつまで続けられるだろうか。

実際に、不良債権の重圧に押しつぶされ、大手だけでも北海道拓殖、日本長期信用、日本債券信用の三行が消えていった。第二地銀、信用金庫、信用組合まで含めると、破綻した金融機関は枚挙にいとまない。

多くの銀行経営者は一九九〇年代半ばから、決算発表の席上、「不良債権処理のヤマは越えた」と繰り返してきたが、その見通しは見事に外れた。長年にわたり、不良債権の処理に追いまくられてきた結果、破綻を免れた銀行も相当に体力を消耗した。金融が日本経済のアキレス腱と言われる由縁だ。

しかし、ここで取り上げた日銀の発表資料の中には、明るい兆しも見える。一つは、〇三年三月末の不良債権残高が総額三十五兆三千億円と、一年前の四十三兆二千億円から八兆円近く減ったことだ。依然として、国内総生産(GDP)に占める比率は、7%強と高水準だが、資産査定は従来の方法よりも厳しくなっている。景気の先行き次第だが、金融正常化に向けた一歩になると期待したい。



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