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経済評論家 杉田暁
不気味な長期金利の上昇
警戒要する積極財政論
先日発表された今年四―六月の実質GDP(国内総生産)は前期(1―3月)に比べ1・0%、年率で3・9%のプラス成長になった。いずれも、一カ月前に示された一次速報値から大幅に上方修正されており、政府や経済界からは「景気の転換点では」(北城恪太郎・経済同友会代表幹事)との期待感が高まっている。水を差すつもりはないが、今後の政策運営を考える上で、重視しなければならない問題点を一つ指摘しておきたい。

長期金利(債券相場)の動向が、景気の先行き波乱要因となる恐れがある。株価が堅調なため、あまり問題視されていないが、長期金利(十年物新発国債の利回り)は六月中旬に年0・4%台まで低下した後、反転して九月上旬には年1・6%台まで上昇した。わずか三カ月でほぼ四倍になった計算だ。

景気の回復とともに、長期金利が上がっていくのは、自然な経済現象と言える。問題は、そのタイミングとスピード。デフレ経済の下では、金利が低くても借金の返済は苦しい。デフレで貨幣価値が高まれば、借金の額も実質的に増えるからだ。

まして、金利が急上昇すると、企業や家計の台所が直撃される。例えば、変動金利の住宅ローンを借りているケースを考えてみよう。名目収入も増えているなら、金利上昇の負担は吸収できるだろうが、名目収入が減っているのに、ローンの返済額だけが大きくなるのでは、たまらない。つまり、デフレのまま金利が上昇すると、企業は投資を手控えるだろうし、個人は旅行や外食などへの消費を減らすだろう。その結果、ようやく見え始めた景気回復の芽を摘んでしまいかねない。

長期金利の上昇で、もう一つ警戒すべきは、地方銀行や信用金庫などの経営に対する悪影響だ。多くの金融機関は、集めた預金を融資に回す代わり、安全な運用先である国債を買い増してきた。長期金利の上昇は、イコール国債価格の低下なので、国債の保有残高が多い金融機関ほど、含み損を抱え込んだ可能性が大きい。大手銀行は株式の保有残高も多いため、最近の株高が国債安を相殺してお釣りがくるが、地銀などはあまり株式を保有していないので、国債安のマイナスばかりが経営に跳ね返る恐れがある。

問題は、長期金利の上昇を抑止する決め手がないことだ。政府が不用意に積極財政の方針を示せば、長期金利は暴騰する危険が極めて大きい。計画性に乏しい財政出動論は、警戒する必要がある。



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