header
経済評論家 杉田暁
成熟経済は「知的財産」で稼ぐ
特許使用料初の黒字
財務省が二月中旬に発表した二〇〇三年の国際収支速報によると、対外取引全般を表す経常収支が過去最高を記録した。各マスコミが報じたように、輸出が日本の景気回復を主導している状況を示しているのだが、もう一つ注目すべき点がある。「特許等使用料」という項目が初めて、黒字になったのだ。

日本の対外取引の構造を一言で表すと、ハードに強みを持つ一方、ソフトはからきし弱い。〇三年の国際収支で見ると、物品の輸出入である貿易収支は、十二兆二千億円を上回る黒字。逆にサービス収支は三兆九千億円弱の赤字を計上した。

サービス収支の赤字は、以前にも本欄で書いたことのあるように観光によるところが大きい。〇三年の旅行収支は二兆三千億円強の赤字だから、サービス収支全体の赤字の六割は、日本人の海外旅行好きのせいだ。まあ、これは良いことだろう。外国に行けば視野が広がるし、使えるお金を持っていること自体、喜ばしい。

問題は、他の多くの項目も赤字になっている点だ。文化・興行に至っては、受け取り額の六・五倍以上も支払っている。こうした中で、これまで恒常的に赤字体質だった特許等使用料が千五百十二億円の黒字に転換した。

この項目は、特許、著作権、商標などを使った場合、相手国に支払った額の合計を表す。日本の企業Aが保有する特許を外国企業Bが使えば、日本の国際収支で、受け取りに計上される。日本でイタリアやフランスの高級ブランドを買えば、商標使用料が相手国に支払われることになる。

このように物と違って目に見えない「知的財産」分野が強いのは、経済が成熟した国だ。米国は、とんでもない額の貿易赤字を垂れ流しているが、サービス貿易だけを取り出すと、十一年ぶりの低水準だった二〇〇三年でさえ六百億ドル(約六兆五千億円)もの黒字。このうち、特許等使用料は二百九十億ドル(三兆円強)をたたき出している。

これと比べると、日本は、ようやく水面の上に顔を出したばかりだ。また、欧米のように純粋に外国から収入を得ているのではなく、日系企業の海外工場が親会社の特許を使っているケースが多く、割り引いて見なければいけない。

しかし、日本の特許出願件数は今や、ドイツを抜いて世界二位。アジア各国の街角には、日本のヒット曲が流れているし、日本製アニメは世界中の子供をとりこにしている。物の貿易で赤字に転落しても、知的財産で稼げるような国になって欲しいと思う。



BACKHOME