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| 政府と対立した前任者の速水氏
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| 明日、福井俊彦日銀総裁が就任して丸一年を迎える。これまでのところ評判は上々。英誌エコノミストは先日、グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長やトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁といった大物を差し置き、福井氏を世界最高の中央銀行総裁と誉め上げた。 この一年、福井総裁は矢継ぎ早に政策を打ってきた。就任わずか五日後に、速水優前総裁が否定していた株価対策(日銀による銀行保有株式の買い取り枠拡大)を急遽決定。その後も、金融緩和を四回も追加したばかりか、「当分、金融は引き締めない」と、繰り返し宣言している。このスピーディーな対応とデフレ克服に向けた姿勢が、高得点に結びついているようだ。 福井氏を語る時、必ず引き合いに出されるのが前任者の速水氏だ。振り返ってみると、一九九九年二月にゼロ金利にしたのも、二〇〇一年三月に量的緩和策という未知の領域に踏み出したのも、速水時代だった。それにもかかわらず、速水氏の評価は極めて低い。 その理由の一つには、同氏が総裁在任中、度々、自らの信念をストレートに、ただし十分な説明なしに表現し、政府・与党の不興を買い、混乱を招いたことが挙げられる。 また、二〇〇〇年八月には、ゼロ金利の解除(金利引き上げ)を断行したが、ほぼ半年後に、量的緩和を導入してゼロ金利に戻すという迷走もあった。 そもそも、中央銀行とは何か。営利目的の民間銀行ではないのは確かだが、政府からは独立した存在だ。速水、福井両氏と同様に日銀生え抜きの総裁だった三重野康氏は、「独自の物差し」を持つことが日銀マンの矜持だと説明する。政府の意向に左右されず、自ら正しいと信じる道を進むといった趣旨の言葉だ。 その意味で、政府・与党との軋轢が絶えなかった速水氏は、「名総裁」の資質を持っていたのかもしれない。先日、岩波書店から出版された「ゼロ金利」(軽部謙介著)は、一九九八年三月から二〇〇三年三月までの速水総裁時代を豊富な取材に基づき、綴った一級のドキュメンタリーだ。 「日銀・政府 なぜ対立するのか」の副題が示すように、政府や政治家からの圧力、日銀内の葛藤が主題。先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の裏話、ゼロ金利解除をめぐる速水総裁と宮沢喜一蔵相の心的な距離感など、人間ドラマとして読んでも面白い。 政府・与党と良好な関係を築いた福井総裁の任期は、残り四年。どんなドラマが待っているのだろう。 |
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