header
経済評論家 杉田暁
わくわくする経済目指せ
活力引き出す規制緩和
十数年前の冬、米国でのことだ。デトロイトでの緊張を強いられる仕事を終え、シカゴに着いた際、ひどい頭痛が襲ってきた。もう一仕事ある。何とか痛みを抑えなければいけない。週末の早朝、知らない街で、開いているドラッグストアを探すのかと考えただけで、絶望的な気分に陥った。

空港から乗ったタクシーの運転手に、頭痛薬を買いたいと訴えると、帰ってきた言葉は「ノー・プロブレム」(任せてくれ)。間もなく歩道に車を着け、「あそこだ」と指した先は、新聞、タバコ、ドーナツなどを売っているスタンドだった。そこで、割高だが四錠(二回分)の市販薬を買った。

日本の都市部では、二十四時間営業のコンビニがいたるところにあり、深夜でも大抵のものは手に入る。しかし、医薬品は違う。なぜコンビニで薬を売っていないかというと、薬事法が「薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けたものでなければ、業として、医薬品を販売し、授与してはならない」と規定しているからだ。

確かに、副作用の強い薬物を無闇に売るのは問題だ。しかし、一般的な市販薬まで禁止しなければいけないのか。こういう素朴な疑問が規制緩和のスタート地点となる。

政府の総合規制改革会議は三月末、三年間の設置期限を終了した。この間、九百項目に及ぶ規制改革を答申。三百二十四の特区で、農業、医療・福祉、教育への株式会社参入などを実現した。政府は、これらを「蟻の一穴」として全国に広げていく考えだ。

前述した医薬品については、ビタミン剤、肌の消毒薬などを「医薬品」から「医薬部外品」に定義し直し、薬局以外で販売できるようにしたほか、年内にはその範囲を消化薬、整腸剤、うがい薬に広げる。人体への作用が穏やかな薬も解禁する方向なので、いずれ米国のように、コンビニで頭痛薬を買えるようになるかもしれない。

規制緩和には抵抗がつきもの。多くのケースでは、自らの権益を守るのが目的だが、規制にはそれなりの理屈もある。薬の例で言えば、薬剤師会は「知識のない一般小売店が医薬品を売るのは危険」と反対している。

しかし、少しでも危ないものはダメというのは、お上の発想。民間に任せなかったら、携帯電話はこんなに伸びなかったはずだ。総合規制改革会議に引き続き、後継組織の規制改革・民間開放推進会議で議長を務める宮内義彦オリックス会長は「マーケットは、どう動くか分からない。だからわくわくする」と規制緩和の効用を唱える。



BACKHOME