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経済評論家 小倉豊
見えにくい家計の活力
公的出動なき時代の切り札
政府は、七月の月例経済報告で景気の基調判断を上方修正する考えだ。今年二月から一貫していた「着実な回復を続けている」との表現を強めようというということだ。七月一日発表の日銀短観企業経済観測調査(反間)の大きなみどころは、大企業・製造業などの業況判断がバブル崩壊前の水準に戻るかどうかだった。結果は、見事に一九九一年八月調査以来の高水準で、エコノミストの予想を大幅に上回った。おまけに、中小企業・製造業も「景気はよい」との回答がわずかではあるが多数派になった。これは、九一年十一月調査以来だ。誰かが「失われた十年は克服した」とか「日本経済は再生した」と叫び出しそうな、上潮の指標や調査結果が目白押しである。しかし、気になるのは家計の活力に立ちはだかる壁、とでも言おうか。

二〇〇二年一月を底とする今回の景気回復局面は、米国、中国、アジアへの輸出を基点に生産の増加、企業収益の改善、設備投資の復活、雇用情勢の改善と公式通りに進んでいる。確かに、失業率は低下しているが、それは、パート労働力、人材派遣、即戦力的人材の確保など、低コスト、熟練ないし特殊技能的な労働力が中心。また、中高年を覆っていたリストラ不安は完全に峠を越したとはいえ、二十歳台若者の失業状況は悲惨だ。

五月には勤労者世帯家計調査で、一世帯あたりの実質消費支出が前年同月比で5%を超える高い伸びを示した。だが、この統計は統計のサンプルが高所得世帯に偏っていると指摘され続けている。例えば、同統計では自動車購入費は四月が同51・4%増、五月が64・1%増と驚異的伸び。一方、日本自動車販売協会連合会のまとめでは、五月は大手五社すべてで国内販売台数が前年同月を下回った。日産自動車のカルロス・ゴーン社長も「国内自動車市場を見る限り、景気回復には懐疑的」と述べるちぐはぐさ。

厚生労働省の毎月勤労統計による平均現金給与は昨年七月から弱含みなのに、家計調査では世帯実収入が今年一月から急増している。やはり、高所得層、資産家層とそれ以外の層の二極化は広がりつつあるのだろう。民間の消費支出が経済の底をがっちり支える構造はひ弱い。そうなると、やはり需要は海外、特に中国の動向次第で振り回される。

もともと日本経済は米国など外需依存は強かった。だが、かつてのように財政出動、公定歩合引き下げ(金融緩和)という公的な救済策はあり得ないということを肝に銘じる必要がある。



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