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経済評論家 原田淳也
原油価格高騰の背景に深刻な「供給不安」

原油価格の高騰が続いている。国際原油相場の基準となるニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、八月に入って連日高値を更新、1バレル当たり46ドル台という史上最高値をつけている。現在の世界の需給環境からみて、原油価格の高止まりは避けられず、今年末まで40ドル前後の高値が続くとみる関係者は多い。既に各国で石油製品の値上がりや航空運賃の値上げなど川中、川下への価格転嫁の動きが広がっており、原油価格上昇が世界経済の大きな波乱要因となってきた。

原油相場高騰の背景には、中国を中心とする石油需要の増大と産油国の供給不安、それにロシアの石油大手ユコスの破綻懸念、イラクやサウジアラビアにおける石油施設に対するテロ不安などがある。また、ヘッジファンドを中心とする投機資金が市場に流れ込み、実態以上に相場を過熱させている側面もある。

しかし、多くの石油アナリストたちによれば、原油価格高騰の根本的な原因は「将来的な供給不安」にあるという。かつては、供給側の主役である石油輸出機構(OPEC)が増産努力を表明しさえすれば相場は落ち着いたものだが、最近は明らかに違ってきた。

例えば、サウジ石油相は8月11日、同国の余剰石油生産能力を駆使して「必要なら増産できる」と表明したが、市場の受け止め方は逆だった。増産すれば「需給安定に必要な生産余力が縮小する」として、むしろ相場の強材料(価格上昇)となり、原油相場上昇は止まらなかった。これは、かなり危険な兆候と言ってよいだろう。

実際、世界の石油需給の構造はこの間大きく変化した。現在の石油の需要、供給はともに日量約八千百万バレル程度で均衡しているが、供給サイドはOPECの増産余力も含めて、今後大きな増加は望めない。インドネシアのように、かつての石油輸出国が純輸入国に転じたりしたほか、世界的に新規油田開発があまり進んでいないことが響いている。

これに対して、石油需要は直近の二〇一五年までにさらに日量六千万バレルも増加するという予測がある。このなかでは、急スピードで近代化を進める中国や、石油輸入大国アメリカをはじめとする先進国の需要増が大きい。現状のままでは、供給量を上回る需要増が続き、その将来的な需給ギャップは拡大するばかりである。

要するに、地球規模で既に石油供給が限界に達しつつあるのに、需要サイドの世界的な増加が止まらないということである。米エネルギー省の予測によれば、世界の石油需要が石油だけでなく天然ガスや石炭などすべての化石燃料の供給量を上回る歴史的な「転換点」は二〇三七年だとしている。つまり、現状のままでは、世界はあと三十年強で致命的な「エネルギー枯渇時代」に突入するというわけだ。

この予測の真偽はともかく、現在の原価相場高騰の背景に、このような世界的な「将来の供給不安」が色濃く反映していることを、われわれはもっと注目しておく必要があるだろう。

石油供給に決定的な限界があるとすれば、目先の需給要因はともかくとして、需要サイドをコントロールする以外に有効な方策はない。幸い、日本は過去の深刻なエネルギー危機の経験から省エネルギー対策が進み、単位当たりエネルギー消費量は先進国の中では低い。自動車などの省燃費化もかなり進んだ。

それに比べて、石油輸入大国である米国はエネルギー節約にあまり関心がなさそうである。石油資本出身のブッシュ政権は供給サイドの拡大を狙って、原油開発や原発拡大に走っている。対イラク戦争も実はイラク民主化による石油増産が狙いだったとも言われる。

だが、石油を中心としたエネルギー依存度の高い消費社会は大きな弱点を抱えている。今回の原油価格高騰に伴うガソリン価格の上昇は家計消費の抑制要因となり、米経済にボディブローのように響いてくることは間違いない。それは米国の経済成長の制約要因となり、ひいては海外頼みの景気回復を続ける日本経済にとっても大きなマイナスとなる。

原油価格高騰は決して一時的な現象ではないということを肝に銘じて、日本は世界的な省石油、省エネルギー政策の先頭に立つべきではないだろうか。



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