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| アジア共通通貨圏への細く遠い道
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| 近く、韓国の中小企業が円建て債券百億円を発行することになった。おそらく、シンガポールあたりがこのディールの舞台になるのだろう。金融インフラの整備がまだ遅れている東アジアの、しかも中小企業が、海外で債券を発行して資金を調達するというのは、ある意味で驚きだ。無論、それを可能にした舞台の演出家は日本であり、いずれ本拠地的な舞台を東京(オフショア)市場に持って来る思惑があってのことだ。そして、そのはるか彼方には、少なくとも為替リスクのない、共通決済手段としての通貨を持った経済・貿易圏の創設を模索しているはずだ。 韓国の中小企業に関して、投資家にとっては、財務や収益など基礎的な情報さえ乏しいはずだ。そこで日韓政府は策を練り、韓国中小企業銀行、韓国中小企業振興団が第一段階の保証を付け、さらに日本の国際協力銀行が二段階の保証を付けるという手厚い措置を取る。これは、主にタイと日本が組んで推進している「アジア債券市場構想」に沿った具体的な行動の第一弾であるため、念には念を入れたことがうかがえる。 タイと言えば、一九九七年夏、それまで急成長を続けた「東アジアの奇跡」が大きくつまずいた通貨危機の発火点だった。タクシン同国首相が、資金調達や通貨安定に情熱を注ぐ背景は理解できる。もともと東アジア諸国は貯蓄率が高く、必ずしも経済成長のために、第一義的に海外の資本に頼らねばならないわけではないはず。だが、金融システムが未成熟なため、各国の銀行は貯蓄の運用を欧米の大銀行に委ねてしまう。欧米の銀行は、リスクを厭わないヘッジファンド向け融資にこれを振り向け、ドルに化けたアジア国民の貯蓄が、短期証券投資の形でファンドから還流してくる。これを現地企業が長期の設備資金に活用しているのだから、ちょっとした経済の変調、思惑で資金の引き上げに直面し、企業も国家も破綻の淵に追い込まれるのだ。為替と、資金の期間という二重のミスマッチが、通貨、経済危機の本質だった。 これを是正するには、自国、あるいは域内の貯蓄を、自らの開発・投資資金に振り向ける金融のシステムを整備すればいいのだ。市場にルールを作り、監督・監視体制を作る。だが、そうしたインフラが、例えばASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3(日中韓)の枠組みで、ある程度整った暁には、かつての欧州通貨単位(ECU)にならって、決済用の共通通貨を目指さない方が、むしろ不自然だ。ASEANプラス3諸国では、域内貿易の割合が既に六割を超えて、なお伸び続けている。 実は、アジア債券市場構想の中には、各国通貨を貿易量で過重平均したバスケット通貨、アジア通貨単位(ACU)建ての債券の発行を目指すことが含まれている。 無論、問題は、この世界の成長センターに対して、決済通貨ドルを介して影響力を保持したい米国の意向、つまりは難色だ。日本主導の構想には、大国化する中国もいい顔をしないかもしれない。自国の貯蓄を自国発展に使える、そんな当たり前のことが実現する道は、案外、難路なのだ。 |
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