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経済評論家 川野一秋
ヘッジファンドの意外な素顔
地道な企業調査が基本
日本に拠点を置き、日本人が運用を担当し、日本株を主要な投資対象とする和製ヘッジファンドが内外の投資家から注目を集めている。ヘッジファンドというと、一国の経済に深刻な打撃を与えることさえある「怖い存在」とのイメージが強いが、和製ファンドの幹部に会ってみると、その仕事ぶりは意外なほど基本に忠実だ。背景には「日本株の運用である以上、遠くニューヨークなどに拠点を置く外国製のヘッジファンドには負けられない」との強いプロ意識がある。

ヘッジファンドの名前の由来であるヘッジ(hedge)とは、投機で大きな損失を出さないよう売りと買いの両方に投資する、といった意味がある。株式の運用に当てはめれば、企業の実力に比べて割高になっている株を売り、割安な株を買う、という行動になる。こうした投資を行えば、相場全体が下落する局面でも、高い値段で売っておいた株を安い値段で買い戻すことにより利益が得られるというわけだ。

資産運用の世界では、投資がうまくいったかどうかを測るために「相対リターン」という尺度が使われるのが一般的だ。これは投資家から任された資産の運用成績を、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)の騰落率と比較して運用の巧拙を評価する。例えばTOPIXが年間で10%値上がりした場合、ある運用会社の利回りが10%だったとすると「何もせずにただ株式を保有していただけ」ということになり、あまり評価されない。ましてや5%だったら運用のプロとしては失格とされ、市場全体の値上がりを上回る成果を上げて初めて高い評価を獲得できる。

相場上昇局面では意味を持つ「相対リターン」だが、下落局面ではどうか。「市場全体は30%の値下がりでしたが、当社は20%の値下がりに抑えました」と言われても、素直には喜べないのが人情だ。一方、ヘッジファンドが目指すのは「絶対リターン」。相場全体が下落するような局面でも、一定の利益を上げられるようさまざまな工夫を凝らすのが彼らのやり方だ。

年間20%以上の運用成果を目標に掲げ、それを上回る結果を出すファンドも少なくない。和製ヘッジファンドの投資手法としては、割高な株を売って、割安な株を買う「ロング・ショート」が主流を占める。各社の「独自性」は、いかにして割高、割安な銘柄を発掘するかにある。買いを入れるのは、市場の注目度は低いが高成長が期待できる小さな企業であることが多い。成長企業かどうかを見抜くため、ファンドのスタッフは投資候補となる企業に出掛け、会社の状況を自分の目で確かめ、経営者の話を聞く。「地道な調査こそが高い運用成績に直結する。だから、年に数回来日するだけの海外の日本株投資ファンドには負けられないし、負けるはずがない」という。

ヘッジファンドが常に高い利益を上げることができるとは限らないが、彼らの行動には運用のプロとしての強い自負があることは確かだ。



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