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経済評論家 原田淳也
本格的「増税路線」は定着するのか

政府税制調査会は二十一日から、二〇〇五年度税制改正の具体的な論議を始めた。今年は景気回復が着実に進展する中、財政再建に向けての本格的な「増税」論が議論の中心となりそうだ。とりわけ、財政当局としては、〇七年度以降の消費税増税を実質的に織り込んでいきたいとの思惑も強い。景気回復という追い風を生かしつつ、思い切った歳出削減とともに増税路線の定着を国民にどう理解してもらうのかが大きな焦点となる。

〇五年度税制改正の最大の焦点は、いわゆる「定率減税」の縮小・廃止問題。定率減税はバブル崩壊後の深刻な不況を乗り切るため、当時の小渕恵三内閣が一九九九年に導入した所得税・住民税の恒久減税措置。定率減税をめぐっては、昨年末の税制論議で基礎年金の国庫負担引き上げに伴う安定財源として廃止案が浮上。結局、「今後二年間で廃止・縮小を検討する」(与党税制改正大綱)ことになった。

財務省としては、深刻な財政危機が続く中、定率減税の段階的縮小・廃止は「既定の事実」といった受け止め方であり、〇五、〇六年度で段階的に廃止するというのが基本方針。「景気対策のための減税」はもはや役割を終えた、今後は財政再建に向けて舵を切るというのが、正直なところだろう。

減税廃止による実質的な国民負担増は、所得税二兆五千億円、住民税八千億円の計三兆三千億円とされる。これは決して少なくない負担増だが、財務省としては、景気回復で賃金低下に歯止めがかかりつつあり、マクロ経済への影響は限られるとして、あくまで正面突破する構えだ。

一方、懸案の消費税増税については、小泉首相が「任期中の増税はしない」と再三明言している。しかし、財務省によれば、「ポスト小泉」に政権が変わってすぐに「増税」とはいかない。そのための環境整備がどうしても不可欠だという。そのため、仮に〇七年度からの消費税増税に踏み切るとしても、その前に過去の遺物である景気対策減税をなくしておかないと、「論理的につじつまが合わない」(主税局幹部)という。

また、消費税増税の際に問題となる逆進性課税、つまり低所得者層の相対的な負担増についても、課税の公平感を演出するため、〇五年度改正で相続税の課税強化に乗り出す構えだ。政府税調の内部でも、相続税は非課税となる基礎控除額が大きすぎるとの批判があり、「金持ち優遇」をなくさないと、消費税増税の障害になりかねないとの見方がある。

〇五年度改正では、環境庁、農水省から「環境税」創設の要望が出されているが、財務省はなぜか冷たい反応だ。環境庁の増税案が具体的に固まっていない面もあるが、本音は、消費税増税という重要なスケジュールを控えて、別のところで増税を仕掛けられては、「増税路線全体のシナリオが狂ってしまう」(財務省幹部)という思いなのだろう。

また、環境税創設には経団連はじめ経済界が猛反発しており、消費税増税で理解を得たい経済界との連携を乱す懸念もある。従って、環境税論議は期待したほどには深まらないだろう。
さて、こうした財政当局の思惑や期待は年末までの税制論議で、果たして実現可能なのか。定率減税廃止はやむを得ないとしても、その前提である着実な景気回復が本当に期待できるのか。「リストラ景気」といわれる状況で、今夏のボーナス支給もマイナスとなり、そこへ減税廃止とくれば景気にマイナスとなる懸念も多分にある。

また、消費税増税については中長期的な財政危機の状況を考えれば、国民の間では「仕方がない」と受け止める空気は確かに強い。しかし、その前提はやはり徹底的な歳出削減であろう。〇五年度予算要求では、新幹線整備や関西空港二期工事など大型の公共事業案件や無意味な国防予算増が含まれるなど、再び財政出動圧力が高まっている。

同じ財務省で、歳出を預かる主計局が緩々の査定をしているうちは、主税局がいくら財政危機を叫んでも、国民は納得しない。財務省が「増税路線」にシフトするのは結構だが、政治家の圧力に負けて徹底的な歳出改革を怠るようでは、増税シナリオはそう簡単には実現しないだろう。



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