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経済評論家 小倉豊
UFJ「告発」のもつれた糸
迷走行政に返り血も
大口融資先に対する貸し倒れ引当が妥当なのか、不足しているのか―。金融庁と鋭く対立したUFJグループは、四月末、行政処分の発動方針を突き付けられて屈服、大幅な不良債権処理の上積みを強いられている。多額の償却資金の新規発生に伴い、資本の余力は一気に低下。これに伴い、まず、UFJは住友信託銀行への信託部門売却を決断(五月下旬発表)から、一転して三菱東京グループとの全面経営統合に合意(七月半ば決定)、さらに、これに対抗して住信と連携しつつ、三井住友銀行グループがUFJとの統合申し入れ(七月末)に踏みきるなど、大銀行の再々編による超メガバンク実現に向けUFJは、草刈り場のようなみじめな様相を呈している。一見すると、金融システムの体質強化を狙う竹中平蔵前金融相や金融庁が勝利したように見えるが、水面下を探ると、UFJを屈服させた金融庁側も、思わぬ返り血を浴びかねない状況にあることがわかる。

UFJ問題には陰鬱な影がつきまとう。金融庁が六月に発動した業務改善命令には、大口融資先の財務に関する資料を組織的に隠蔽したことへのペナルティーが含まれている。この隠蔽資料が発見された経緯が異様で、立ち入り中の検査責任者に割り当てられた席の内線電話に、直接、「銀行三階の三〇七号に隠蔽資料がある」との内部通報があったというのだ。ここから、ダイエー、大京、双日などの引当不足が当局に把握されたという展開。UFJ側は、発見された一連の資料は一種の最悪事態のシュミレーションであり、実態を妥当に表現したものではない、などと反論。だが、最後は組織的隠蔽を認めた。当局は行政処分を発動し、UFJは組織関与を認めたわけで、竹中金融相は当然、刑事告発の検討を口にし続けている。

ただ、七月末にUFJが罪を認めてから、既に二カ月。東京地検特捜部も当初から捜査準備をしているのに、金融庁の動きは右往左往の印象を拭えない。周辺情報を総合すると、UFJの不正を司法の場に持ち込んだ場合、当局側の非も同時に公開の場で弁論の対象になるというのだ。例えば、UFJの大口不良債務者に関する検査は、ここまで一気に明るみに出るまで把握することが不可能だったのか、その検査行政の適正性がひとつ。また、金融筋によると、現行の検査体制は、それぞれの銀行に立ち入るチーム編成により厳しかったり、比較的寛容だったりするブレがあり、それを公開の場で筋道立った説明を迫られる。特に、貸出債権の劣化については当局、銀行でさほど対立は起きないが、経営支援中の企業が相変わらず経営難にあるのか、それとも正常経営の軌道に戻って債権の格上げが可能かについては基準がなく、UFJだけでなくあらゆる銀行に、当局側の裁量、恣意への憤懣がたまっている。UFJも間抜けではない。法廷に立てば、こうした検査基準の不備を俎上に乗せる準備は万全だ。

自ら処分し、相手も認めた罪の告発をためらう金融庁の苦悩は深い。刑事告発で海外当局が撤退命令に踏みきったり、市場に不測の不安を与えるリスクも慎重になる一因。こうした金融庁の煮え切らない態度に、特捜部も戸惑うほどだ。



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