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経済評論家 小倉豊
ダイエー問題処理、迷走の裏
なぜここまでもめたのか
ダイエーの再建を産業再生機構が請け負う方向になったが、本当にこれが大銀行の不良債権と、経営不振の大口債務者との最後の問題なのか。疑わしい面も残るが、金融・資本市場などにそのような印象を与える象徴的案件であることは確かだ。胸突き八丁の厳しい峠を越える苦しみを演出するなら、政府と民間が苦悩する多少の演技も必要だろうが、それにしても、銀行は金融庁と組み、金融支援の打ち切りを宣告してダイエーを追い詰める。一方のダイエーは、再生機構による公的関与を忌避して経済産業省とタッグを組み、歩み寄りの気配を見せない。最後は、官邸からの天の声で銀行と金融庁が勝利する、との結末は余りに大げさではないか。

経産省の再生機構嫌いは、いま始まったことではない。二〇〇二年の秋、新任の竹中平蔵金融担当相がぶち上げた、不良債権処理のハードランディング路線が大混乱を招き、その収拾策として産業再生機構構想を打ち出したのは財務省だ。これに小泉純一郎首相と竹中金融相が飛びついた結果、経産省は縄張りを荒されたとの思いが強い。

過去二度のダイエー再建策もこの機構を使わず、経産省所管の産業再生法の枠内で進めてきた。その基本的考え方は、民間の再生ファンドが主導したうえで、ウォルマートなど外資系流通業、または商社をスポンサーとするもの。逆に言えば、スポンサー候補に名乗りを上げている国内同業他社のイオングループやイトーヨーカドーは、商務流通政策的に「ダメ」という判断だったようだ。イオンやヨーカドーがダイエーを吸収して規模拡大すれば、返って競争が制限されるし、日本の流通業に新しい血を入れることにもならない、というのが主な理由だ。

反・再生機構を前提としたこの基本戦略は、村田成二・前事務次官の元で固められたらしい。ただ、経産省が関与した過去二度のダイエー再生策は、失敗しているのも事実だ。ある消息通によれば、村田氏自身は「流通業に新たな血を入れる」というスポンサー選定に経産省が影響力を残せるなら、再生機構活用への妥協も視野に入れていた。従って、ダイエーの法的処理という断崖に向けて走るチキンゲーム(度胸試し)で、ここまで本気になる必要はなかったのだ。経産省内に「今の担当者が村田さんの真意を誤解して突っ走り、官邸の介入を招いて面子をつぶした」との批判もあるようだ。

産業再生機構を使えば、ダイエー向け債権はすべて正常債権扱いになるのだから、金融庁・主力銀行コンビが、このチキンゲームで本気なるのは当然。ペイオフ(預金の払い戻しを元本一千万円とその利子までとする措置)は来春解禁される。不良債権比率の半減(4%台)の目標もあるのだ。

だが、髪振り乱して奮闘し、結局は面子まで潰した経産省の真の思惑は何か。ダイエーという巨大小売り流通業の処理に絡める形で、大型中間流通業の再編・整理、すなわち総合商社の一段の再生政策で完全な主導権の掌握を狙っていた、との観測も流れている。外資系流通の参入促進はダミー。商社の経営見直し問題は、日商岩井とトーメン(双日)だけで終わっていないのかもしれない。竹中氏の後を継いだ伊藤達也金融相か、親分筋の竹中氏自身か、あるいは小泉首相か、「大口不良債権の処理は終わった」と公に口に出来る日は、実はまだ先かもしれない。



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