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経済評論家 小倉豊
「フリーター」をめぐる断想
雇用と消費は大丈夫か
いささか冗漫な話が混じるのをお許し願いたい。

最近、「ニート」という用語が新聞に登場し始めた。これは職業にもつかず、学校にも行かず、就労の意欲もない人で、享楽的なヤンキー型、引きこもり型、考え込んで職につけない立ちすくみ型、就職に挫折して立ち直れないつまずき型の四タイプという。

これに比べれば、フリーターは立派といえる。フリーターというのはあいまいなマスコミ用語ではなく、内閣府の「国民生活白書」で定義されている。すなわち、「十五―三十四歳の年齢層」のうち「パート・アルバイト(派遣社員などを含む)」「働く意志のある無職の人」のこと。現に働いており、少なくとも働く意欲はあるわけだ。ただ、三十五歳を過ぎた中高年は、定義において失業してもフリーターと自称する資格はない。フリーターの増加は、労働力調査における失業率に微妙なゆがみを生じさせている重要なテーマと思われる。だが、筆者の独断的見解によると、この言葉の起源はあるお笑い番組にあった。

それはバブル期で人手不足状態にあった十年以上前、宮仕えを嫌うタイプの若者が、アルバイトでも相当の収入を得られた時代に逆上る。タレントのタモリが司会する昼のお笑い番組は、何かの芸や特技を持つ素人の出演を盛んに募っていた。

バブルの金余りに浮かれる世には、「フリー」で収入を得ることにあまり苦労がなかったようで、デザイナー、ライター、コーディネーターとかの横文字商売に「フリーの」という形容をつけるのは、才能やセンスの自己顕示のため浮薄に流行した。

ある日、タモリの番組に登場した素人の若い男性に、タモリが「職業は」と聞くと、「いろいろアルバイトを」と答えた。当時、まだ笑いに毒があったタモリは「ははあ、フリーのアルバイターね」と当てこすった。アルバイトがフリーなのは当たり前だ。客には受けなかったが、微妙なユーモア(エスプリ?)に敏感なテレビスタッフたちから爆笑が起こった。

ここからフリーアルバイターという言葉が徐々に広がり、NHKから民放に転じたというタイプの、下品な皮肉などと無縁そうなキャスターらが、やがてバブル崩壊後の若者の就職難に絡めて、大まじめに「フリーアルバイターの増加問題」などと論じ始めた。失笑を禁じ得なかった。さらに若年失業の深刻化で若干の曲折を経て、フリーターという用語が政府によって定義される重大事態に至った、と見ている。

フリーターのうち、パート、アルバイト、派遣社員は正社員より賃金が低く、企業にとっては好都合だ。景気の回復に伴って失業率を押し下げているのはこの「非正規雇用」。日銀の分析では、最近の失業率の低下は、職業を結婚や育児と両立させようとする高学歴の女性(派遣社員の時給は正社員の約八割)と、質の高い「非正規」労働力を求める企業のニーズが一致したところで現れている傾向のようだ。それを証拠に、正社員志向の強い男性の失業は、女性に比べて約0・5も高い状態が続く。さらに、非正規雇用の賃金の低さが、六十五歳以上の就業意欲を押し下げている。

この状況を映し、労働報酬を得ている現役世代の消費は過去五年で一割減。しかし逆に引退世代は横ばい。これが最近の消費堅調の構造の断面だ。公的年金制度による所得移転、貯蓄取り崩しに支えられた高齢者の消費構造は息切れしないのか。最近、「家計の生活レベルの築き方」を再考すべし、といった福井俊彦日銀総裁の言葉は、端的に、日本の家計はマクロ的には物質的豊さの追及の天井に突き当たった、という意味だと思う。

ただ、最後にニッセイ基礎研究所の楽観論も付け加えておく。筆者が理解したところ、今後十年を展望すれば、対外純資産からの投資収益で経常黒字は維持する。一方、円高と、労働力減少で輸出生産は落ちて貿易・サービス収支は赤字に向う。しかし貯蓄率低下は消費の伸びを高め経済は内需主導に。主役の消費は、やがて金利が上昇して家計の利子所得を増やし、企業は投資より収益を配当にし、労働力不足で賃金も底堅くなってマクロ的には家計は案外豊か。ただし、タイムスパンは十年だ。さて、どんな未来がまっているのか。



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