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経済評論家 原田淳也
迷路にはまり込んだ民営化制度設計


泉内閣は、来年の通常国会への郵政民営化法案提出に向けて、民営化の具体的な制度設計と法案化作業を進めている。制度の細かい仕組みは、竹中平蔵担当相の下で民間の有識者会議の議論を基に検討中だが、予想通りと言うべきか、議論はなかなか収斂せず、迷路にはまり込んできたようだ。

その原因は、政府が先に決めた「基本方針」(9月10日閣議決定)の民営化論が極めて曖昧で不徹底な中身だったことによる。ある政府関係者は「民営化の各論に及んで再び基本論を蒸し返すような格好になった」と嘆く。

例えば、2007年4月の民営化開始時点で4つの新会社が生まれるが、現在の郵政公社の職員約27万人の大半を引き継ぐとみられる「窓口ネットワーク会社」について、有識者会議では「過度な人員配分は、窓口会社の経営を圧迫する」と反対論が根強い。

しかし、総務省や郵政公社の側は、郵便局の窓口設置基準を窓口会社の経営判断に委ねると、ネットワーク維持に支障が出ると「反対論」が噴出。スタート時の職員の振り分けをめぐって、「雇用維持」か新会社の「経営効率」かの対立が続いている。

また、もう1つの争点である民営化移行期間中(2007年−2017年)の郵貯、簡保会社の業務拡大については、国の出資が続くので「見えない政府保証」が残る。このため業務拡大は制限すべきだとする意見が大勢だ。しかし、公社側はそれでは新会社の健全経営は維持できない、民間と同等の業務展開を認めてほしいと強く主張している。

何のことはない。「基本方針」決定の際にさんざん議論した争点が再び蒸し返されて、徹底的な民営化を求める民間側と、民営化の中身になお慎重な総務省・公社連合の対立が依然続いているのである。

しかし、こうした事態は「小泉・竹中ライン」が強引に決定した「基本方針」そのものが曖昧で不徹底な民営化方針だったことが大きく影響している。例えば、当初の民営化五原則に「雇用維持」を盛り込み、郵政ネットワークの活用と称して「窓口会社」という極めて中途半端な組織を新設したことが響いている。そのことで「官から民へ」という民営化の基本が歪められたと言ってもよい。

効率の悪い官の組織を市場原則に沿った形で民営化するというのに、まず「雇用の維持」というのでは話は通らない。効率的な組織を目指して新会社の経営陣が過剰雇用を適正化していくのは当然のことではないか。

また、窓口会社についても、その主要業務となる郵便、郵貯、簡保会社からの業務委託(これが収益の大半を占める)について、その委託料金の水準をどうするかの問題が残る。コンビニ的な業務拡大も結構だが、新規事業がうまくいかなければ、委託料金の水準を操作して経営を維持するといういびつな組織になる可能性もある。

いずれにせよ、小泉内閣が掲げる郵政民営化はまだまだ波乱含みの状況にある。総務省・公社連合の巻き返しが始まったとみてよい。今後は、民営化の基本的な枠組みは何とか維持するものの、具体的な制度設計では「例外措置」や実質的な「政府支援」などが次々に盛り込まれ、「民営化」とは名ばかりの「汚れた改革」になってしまう公算が大きいようだ。



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