|
|
| |
| 金融庁との不透明な連携
|
|
| 民間主導の経営再建にこだわったダイエーが、結局は主力銀行団に押し切られて産業再生機構への支援要請に踏みきったドタバタ劇は記憶に新しい。その重大な決断に当たって「またか」と意外感を与えたのは、最後にダイエーを断念させたのが、担当監査法人のトーマツからの宣告とされる点だ。監査法人は、ダイエーが従来方針を変えないなら二〇〇四年八月中間決算を承認できない、と突然通告した。上場企業である以上、この承認なしに決算と有価証券報告書が完結しない。振り返れば〇三年春のりそな銀行、同年秋の足利銀行の破たんの引き金を引いたのも、監査法人の決算をめぐる判断。資本市場に大きく影響する企業の外部監査を請け負う監査法人は、資本主義の番人としての責任がますます重くなる。だが、その民の番人の自主独立性には、疑問も多い。 今年度から、公認会計士法が改正され、監督官庁である金融庁は、傘下の監査審査会を通じて監査法人に立ち入り検査が実施できるようになった。企業は監査法人にとって顧客であり、この関係の中で適正なチェックがなされているか、役所の厳しい監視に置かれたことを意味する。 りそな銀行が、〇三年度九月中間決算で預金保険法一〇二条による資本注入で実質国有化に追い込まれたのは、直接には監査法人が債務超過状態と認定したからだ。しかし、その後明らかになってきたのは、これが監査法人の独立的判断とは言い難い事実。りそな銀の決算をめぐっては、自己資本比率が基準を満たしているとする銀行側と、疑問を呈する監査法人で協議が難航。だが、この協議に金融庁が不透明な形で割って入った。しかも金融庁内部が首脳部、監督部局、検査部局で穏健派と強硬派で方針が定まらない混乱ぶり。最終的には、同年度の特別検査結果を盾に、金融庁がりそな銀の抵抗を屈服させたのが実情。監査法人は、金融庁の決定に沿って破たんの直接の引き金を引いただけの役回りだ。同年秋の足利銀でもほとんど似た展開。結局は、金融庁が金融検査の結果を、銀行側の反論を抑えて屈服させれば、自動的に監査法人が決算で破たんの引き金を引かされる構図が定着するのではないか。 ダイエーの件での監査法人の役割は一層不可解だ。産業再生機構の活用を求める主力銀行団と、民間ベースでの再建継続を主張するダイエーは鋭く対立した。頑固なダイエーの姿勢に、早くから銀行側は金融支援の打ち切りや、法的処理を申請する姿勢さえ示唆。一方、再生機構も早くから支援要請期限を明示し、早期決断を促していた。 一方、ダイエー側は内外の大手流通業者、商社、再生ファンドによる民主導の再生策が出揃うまで若干の結論引き延ばしを図っていた。この不安定な状況下、ダイエーと監査法人は様々な事態への対応策を協議して意思疎通を図っていなければおかしい。だが、機構が示す支援要請の期限最終日、監査法人が突然、決算不承認の最後通告を突き付け、一瞬にしてダイエーの民間主導の再生を断念させたという。大型不良債権の最後の象徴とされるダイエーを、金融庁が中間決算で重要視していたのは明らかだ。ぎりぎりの最終段階で、監査法人の判断が企業の命運を決めたことに、金融庁の方針と一体化した気配を感じるのは自然である。市場経済における民の自主性、透明性を、独立した監査法人による外部監査に期待できるような状況はまだ遠いようだ。 根本的な問題と思われるのは、監査法人が依拠する会計基準は、証券取引法に定められたもの。それに基づき、あらゆる株式公開企業の有価証券報告書は作成され、投資判断に利用されている。しかし、片や、金融庁が金融監督のために定めた資産査定基準は、欧米と比べても厳しい。従って、あるひとつの企業について、証取法基準では健全だが、金融監督上は破たん懸念という混乱が放置されていることになる。商法会計、税務会計の基準もばらばらであり、こうした制度上の混乱を整理して、民の監査が十分な信頼を得るように制度上の対応を急ぐべきだ。 |
|