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経済評論家 川野一秋
西武鉄道の本末転倒
東証上場廃止に反省なし
不適切な情報開示を行っていた西武鉄道と伊豆箱根鉄道に対し、東京証券取引所は両社株の上場廃止という非常に重い処分を下した。ところが西武は、ルール違反企業に厳罰を科すことで市場の信頼維持を図ろうとした東証の思いを逆なでするかのごとく、すぐさま新興企業向け市場「ジャスダック」への上場を目指す方針を表明。関係者の誰も予想しなかった「奇策」に打って出た。西武としては問題発覚後に暴落した株価をなんとか持ち上げたいと考えたのだろうが、今回の対応はあまりにも拙速だと言わざるを得ない。

東証が西武鉄道株を上場廃止にしたのは、@大幅に誤った情報を五十年近くもの長期間にわたり投資家に提供したA誤った情報開示は上場廃止を回避する目的で組織的に行っていた―ことが「投資家の信頼を裏切るもの」(鶴島琢夫東証社長)だったからだ。経営破たんしていない企業が上場廃止になるのは極めて異例のケース。西武以外にも情報開示の問題が続出しているため、このままでは東京市場が海外の投資家からの信頼を失いかねないとの危機感を強め、正確な情報開示は上場企業が守るべき最低限のルールであるとのメッセージを送ったと言える。

ところが、西武は処分を受けた直後に、上場基準が東証より緩やかなジャスダック市場へのくら替えを目指す方針を示した。それも来年三月末までに実現したいとの期限付きで。会見した小柳皓正社長は「八千人の一般株主の利益と投資家の利便性のため」だと説明した。確かに一般の株主は上場廃止で大きなダメージを受ける。廃止になると株価は大幅に値下がりするし、保有株を売りたくても売れない、という状況に陥る。

しかし、一番困るのは西武鉄道自身だろう。西武の大半の株を保有するのはグループの中核企業コクドである。コクドは非上場のため経営内容を公表せず、堤義明氏が四割近い株を保有している「堤商店」と言っていい企業だ。西武の経営改革では「コクドによる支配」からの脱却が最優先課題であり、コクドが持つ大量の西武株を売却する必要がある。そのためには、株式を上場しておき市場を通じて売却したいというのが西武の考えだろう。

ただし、これは西武の立場からの一方的論理であり、投資家側からの視点が欠けている。同社は情報開示の姿勢が上場企業として失格と判断された企業であり、インサイダー取引の疑いで当局の調査を受けている最中でもある。これらの問題への対策を明確に示す前に「まず上場ありき」では、投資家の理解を得るのは不可能だろう。西武は経営改革委員会を設置して、グループ再生計画を来年一月にまとめる予定。この計画に事件の反省を踏まえて社内管理体制の再構築などを盛り込んだ上でジャスダック上場方針を表明すべきだった。



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