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経済評論家 原田淳也
「破局」の年とならぬように

「禍福はあざなえる縄の如し」と言われる。「災い」多かった二〇〇四年から、今年二〇〇五年こそは「福」の年に変わってほしいと誰もが願う。だが、世界が直面している現状は、そんな生やさしい状況ではなさそうだ。大地震、ハリケーン、大津波といった天変地異が地球社会に住む人間への警告だと考えれば、「災い」の先には確実に「破局」が待っている。

昨秋の米ブッシュ大統領の再選によって、世界の外交、軍事、経済において何かが変わっただろうか。戦後イラクは、今なお多発するテロや宗教間紛争によって果てしない混乱が続き、中東全体の「民主化」計画や和平交渉の先行きは一段と不透明になった。

一方、反ブッシュを掲げた欧州と米国との関係は、簡単には修復に向かいそうにない。その間、経済的進化を遂げてきた中国の台頭により、アジア圏諸国の対米関係に微妙な変化が広がりつつある。これは、国際社会の協調や合意を無視してきたブッシュの米単独主義の弊害が静かに広がってきたということだろう。

経済面では、ブッシュ再選後に始まり今なお続くドルの傾向的下落が、そのことを鮮明に裏付けている。人によっては、ドル下落は「破局」の前兆とみる向きも少なくない。実際、米有識者の間では、「ドル暴落」とドルファイナンスの瓦解が米国経済の長期的リスクとして意識され始めた。産油国や中国、ロシアなどの「ドル資産離れ」に世界の為替市場は敏感な神経を研ぎ澄ましている。

世界経済の現状は、極論すれば、米国の「消費バブル」と中国の「投資バブル」、それにあえて加えれば、日本の「金融緩和バブル」が重なって、世界のマネー循環がぎりぎりの均衡を保っているにすぎない。戦後イラクと中東民主化に米国が肩入れすればするほど、戦費は拡大して米財政赤字の改善は期待できず、経常赤字も増え続ける。つまり「双子の赤字」を削減しようとすれば、世界不況の引き金を引く。といって米経済の成長を追求すれば、逆にドルが危うくなるというアンビバレントな状況にある。
 
地球環境の問題でも、ブッシュは京都議定書から離脱したまま、国際社会の協調に背を向けている。米国の温暖化ガス排出量は地球全体の実に四分の一を占める。その米国のわがままはいずれ世界を「破局」に陥れるかもしれない。

こうした経済、環境問題の根っこにあるのは、米国流のグローバリズムと極端な「市場原理主義」であろう。そのことによって、ロシアに続いて中国や東欧社会を自由主義経済に組み入れ、効率的な経済を立ち上げたことは、確かに大きなメリットがあった。だが一方で、今度は地球規模の貧富の格差を生み出したことも間違いない。

多くの途上国は経済発展の段階が異なり、宗教や文化も異なる。そこへ米国流の価値観や市場主義的なアプローチを押し付けるだけでは、怨嗟や反発しか生まない。例えば、戦後イラクの水道事業を民営化方式で行うというアプローチなどは、その典型だろう。

国家が自国の利益を前面に押し出して「覇権」を競うという方向は、行き着く果ては「戦争」でしかない。そのことは戦前の植民地主義と二度にわたる大戦の歴史が教えている。戦争によって潤うのは、ほんの一部の国防資本とその関連産業でしかない。世界の富や利益を一部の人たちや勢力が独占しても、そのことで世界は決して良くはならない。「改革」を掲げる小泉政権も、こうした地球規模の競争と弊害の現実をもっと正確に見極める必要がある。二〇〇五年を「破局」の年にしてはならない。そのことだけははっきりしている。



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