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| 日本銀行は長らく金融の量的緩和策を続けてきたが、ここへきて大きな壁にぶつかっている。緩和策の目安とする日銀当座預金の残高目標の維持が難しくなり、日銀が市場に対して行う資金供給オペが未達となる「札割れ」が頻発しているからだ。短期金融市場では日銀の強引なオペに対して、市場機能を無視した資金調節と非難する声も上がっている。 現在の量的緩和目標は三十兆〜三十五兆円。昨年一月にこの水準にまで引き上げたが、日銀によれば、その理由は「デフレ克服への強い意志を示すため」だった。しかし、その後の展開は、緩やかながら景気が徐々に回復、心配された金融不安のリスクもほとんど解消し、金融機関の側からみれば、所要準備(五・八兆円)を大幅に上回る超過準備を日銀当座預金に積み上げておく必要はなくなってきた。銀行などの資金繰りが平常時に戻りつつあり、日銀のオペに反応しづらくなってきたというのが現状だ。 では、足元の経済、金融事情の変化に対応して、量的目標を引き下げればよいではないかと誰しも考える。だが、現在の日銀はそう簡単に目標修正には動けない事情がある。なぜなら、第一に、日銀自身が緩和策解除の「要件」として、消費者物価の前年比伸び率が安定的にゼロ%になることと決めているからだ。残念ながら、この条件、つまりデフレ解消の目標は現状では満たされていないので、この面からは動けない。 第二に、現在の「福井日銀」は、量的緩和策は不安定な景気を下支えし、金融不安等の様々なリスク要因に対応するなど実体経済に対する刺激効果があった、と一貫して主張し続けてきた経緯がある。福井俊彦総裁は就任以来、立て続けに当座預金残高目標を引き上げ量的緩和を拡大してきたことはよく知られている。従って、今目標を下方修正すれば、これまでの「緩和」策から「引き締め」策への転換と市場に受け取られるのは当然である。 だが、その場合は政府・与党が納得して、かつ金融資本市場も「引き締め」やむなしとするほどの本格的な景気回復が必要であり、国債増発で金利上昇に敏感となっている財務省などの理解も当然求められる。しかし、現実の日本経済はそこまで強くなったとは言えまい。むしろ、目標修正は債券市場に思惑を呼び長期金利が急騰するリスクをはらむ。 要するに、日銀は量的緩和の「解除」へ動こうにも、簡単には動けない。といって、このまま三十兆〜三十五兆円という「量的目標」をそのままにしておくと、「札割れ」は頻発し、自ら設定した目標をクリアできないという異常事態に陥ってしまう。そうなると、目標達成へマネタリーベースのさらなる拡大(例えば、国債買い切りオペの拡大など)を要求される懸念もある。このため、日銀政策委員会の議論では、流動性需要の後退した分だけ目標を減額してはどうかという技術的な対案まで出ている。 福井総裁は、四月のペイオフ完全解禁以降の金融市場の動向をみた上で、量的目標の修正も含めて緩和解除のあり方を議論する方針のようだが、そこではやはりこれまでの量的緩和策のしっかりした検証が必要だろう。その点を曖昧にしたままの「緩和解除」では市場に無用の混乱を招くばかりか、日銀への信頼を損ねる可能性がある。日銀関係者によれば、「福井日銀」以降の目標額の相次ぐ引き上げは実体経済にさほどプラス効果はなかったとする懐疑的な見方が多い。「デフレ退治」という政策目的と「量的緩和」という手段の組み合わせが本当に正しかったのか。そのことに日銀はまず答えるべきだろう。 | |