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経済評論家 小倉豊
社会的責任、逃げる企業を許すな
人々の視線に期待
企業経営もますます骨の折れる時代になってきた。株の持合いが急速に解消されつつある中で、機関投資家や一般の株主を重視すべく、配当のための利益確保は死活問題だ。しかし、一方で儲け主義一辺倒も許されない。企業統治(コーポレート・ガバナンス)の重要な要素として「社会的責任投資」(SRI)が米国から浮上。つまり、米州政府などの退職年金基金などが、資金運用の対象銘柄として、その企業が環境や地域貢献に取り組む姿勢を選別基準として重視し始めた。その思想は日本にもじわじわ浸透している。

例えば、住友信託銀行などが、SRI面での優良企業の株式を中心にしたファンド(投資信託)の組成・販売に踏み切り、一定の成果を上げている。同行関係者は、まだ手探り状態であることを隠さないが、「少なくともSRIをきちんとやる企業は、不良品、食中毒、リコール、脱税、巨額損失、セクハラ、総会屋事件なんかで、株価が急落する可能性は低い」と語る。確かに、消費者金融のように、儲け過ぎ企業というのも何やら怪しい。雪印、三菱自動車みたいな頓馬な企業への投資を避けるよすがになるかもしれない。

四月中旬に開かれた労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)。男女雇用機会均等の問題に話題が及んだときのことだ。ある委員は、男女均等の優良企業を、毎年、大臣が表彰する制度について「そんな表彰なんか誰にも知られていない。行政の自己満足じゃないのか。経営者には何の動機付けにもならない」と酷評。これを機に、別の女性委員が「優良企業を行政が認定し、商品にシール、マークを付けると、消費者に企業の姿勢がよく伝わる」と提案した。

女性を平等に扱っているか、不平等な処遇をしているか、食品、日用品はもちろん、耐久消費財など店頭に並ぶ商品が企業の姿勢をさらけ出す。買い物の主役はやはり女性だとすると、そうしたメーカーにとって重大問題だ。

同審議会では、その影響が余りに大きいので、ある経営側委員は逆に、「行政はできやしないよ」と言わんばかりの態度を見せていた。少々甘くないか。

男女機会均等は、確かに業種などで実情も異なろうし、基準作りは簡単ではない。行政の態度が消極的なのも事実。本来、SRIという公共性の増進運動の先頭に立つべき年金資金運用基金(要するに国の厚生年金の運用機関)が「運用益確保が一番」と涼しい顔で言い放ち、最近の役人の意識の低さをさらけ出してもいる。

ところで昨年秋、三菱信託銀行が「仕事と生活の両立」、つまり育児休業などに配慮する企業の株で構成した「ファミリーフレンドリー投資信託」を発売した。約半年で二十億円程度を集めたらしいが、ボックス圏にある日本株に特化したファンドとしては、異例の成績と言えよう。特に、若い女性が多く投資したという。企業にとって、収益確保が至上命題なのは間違いないが、SRIなど二の次と高をくくった経営者、そして感度の鈍い官僚は、いつか尻に火がつくのではないか。



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