|
|
| |
|
|
|
| 金融の量的緩和策からの「出口」を模索し始めた日銀と、財政再建を優先したい財務省の綱引きが水面下で始まったようだ。日銀は、五月の金融政策決定会合で、量的緩和策の目安となる当座預金残高目標(三十兆〜三十五兆円)の「下限割れ」を容認することを決定した。福井俊彦総裁は「緩和政策の枠組み変更には当たらない」と説明するが、市場では目標減額へ動くための布石ではないかとの見方が多い。 今回の決定は、オペなどを通じて金融市場に日銀が供給する資金量の下限(三十兆円)を場合によっては下回ることもあり得るという「なお書き」を追加したもので、残高目標そのものを引き下げたわけではない。日銀によれば、金融不安解消などで金融機関の流動性需要が減少したことに伴う「技術的な対応」にすぎない、という。 しかし、関係筋によれば、前回四月会合で政策委員会の一部審議委員から目標減額の提案が出るなど、量的緩和策の「修正」に向けた議論が増幅。「なお書き」修正を決めた五月会合の詳細な中身はまだ分からないが、目標修正派と現状維持派でかなり拮抗した議論が展開されたことは間違いない。 こうした動きに敏感に反応したのは、政府側、とりわけ来年度予算編成を控えた財務省だった。谷垣禎一財務相は、会合後の会見で「日銀の決定が緩和政策の解除につながるという理解であれば、承服できない」と明快にくぎを刺している。財務省としては、景気の先行きリスクに加えて、財政再建のための緊縮財政の継続、さらには消費税率引き上げという重要な政策課題を抱える中で、金融緩和から「引き締め」への転換は長期金利の上昇に伴う財政負担の増大につながる、という危機感が強い。従って、緩和策の転換はできるだけ遅い方がよいというのが本音だろう。 四月会合の議事要旨によれば、財務省からの出席者は「日銀は一貫した政策を続けてほしい」と発言している。「一貫した政策」とは、「福井日銀」が総裁就任後に立て続けに実行した追加緩和(目標額の引き上げ)について、「景気回復を確実なものにするため」と説明してきたこととの「矛盾」を指す。日銀としては最も痛い部分を突かれた形だ。 もともと量的緩和の追加策がどれだけ効果があったかは不透明であり、景気下支えと金融不安リスク解消の効果を分けて計量できない。そうした中で、緩和策からの「出口」を何とかつかみたい日銀が目標減額への誘惑にかられたものの、財務省の反撃に遭ってやむなく「なお書き」修正でお茶を濁した、というのが実情のようだ。ある日銀幹部によれば「政策転換の本番はまだ先。そのときはわれわれの判断で実行する」としている。 マクロマク政策運営では財政、金融政策がぶつかり合う場面は常にある。小泉政権下では財政出動の余裕がほとんどなく、ゼロ金利を続ける金融政策が全面的に面倒をみてきただけに、日銀が金融政策の「正常化」に固執したい気持ちはよく分かる。しかし、その前提は、自らの政策について明確に説明するという中央銀行としての説明責任である。「なお書き」修正といった国民には全く分かりづらい手法はやはり邪道であろう。 財務省サイドも「緩和策の転換で景気がおかしくなれば、日銀の責任は重い」といった恫喝じみた議論ではなく、財政再建と金融市場との関係をもっと冷静に整理して、構造改革を推進する上で財政規律回復へ金利機能が果たす役割を考慮すべきときではないか。少なくとも、役所間の卑小な責任のなすりつけ合いだけはやめてほしい。 |
|