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| 不動産、地価動向に変調の兆し
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| 日銀が公表した地域経済報告の中で、不動産・地価動向に絞った地域別分析を示し、民間エコノミストらの関心を集めている。現在の日銀の量的緩和政策は、消費者物価指数(CPI)がほぼ唯一の判断基準。量的緩和の解除条件として、CPIがゼロ%に戻ることに加え、より詳細に(1)安定的にゼロ以上を維持すること(2)再びゼロ未満に戻らないこと(3)その他経済情勢を勘案すること―と念押しし、ある日突然、政策変更を実施して市場を混乱させることはないというメッセージを発している。いわるゆる「政府と日銀が一体となったデフレの克服」の合意事項を徹底しているわけだ。 ただ、連想として素朴に過ぎるのは承知だが、一九八〇年代末、プラザ合意による円高と対米経済不均衡を大義名分にした金融緩和と、その後のバブル経済の反省を、どこか想起せざるをえない。 当時の不動産価格と株価の熱狂的な上昇に対して、日銀は金融政策面でまったく対応しようとしなかった。それは、こうした資産価格がCPIを構成する指標に入っておらず、「CPIに限ったパフォーマンスは先進国中で最も優秀だった」(日銀幹部)、つまりインフレの影すら見えなかったためだ。ただ仮定だが、この時、日銀が資産価格をターゲットにして引き締めに動いていたら、当時の大蔵省との力関係から見て、「せっかく未曾有の経済繁栄を謳歌しているときに、何を余計なことをするか」と一喝され、所詮はバブル熱狂の調整などできなかったに違いないのだが。 CPIという一般物価と、資産価格をどう見るか、学問的にはなかなか難しい論争があるらしい。しかし、一九九〇年代末の米株価バブル(IT株バブル)の際に、グリーンスパンFRB(連邦準備制度理事会議長)が、株の高騰をいさめつつ、急落を避ける絶妙の舵取りを行ったことは、かれが金融政策運営の神様のように言われる大きな要因でもあった。要は、日銀はこのことから学び、八〇年代バブルの時のように、資産価格は見てみぬふりはしないし、できないだろう。 さて、そこで、日銀があえて不動産価格や地価の分析をまとめたのは、政策に資産価格動向を加味すべきだとする日銀内の空気を反映したとの観測も浮上する。その分析によると、全国銀行の貸し出し動向で、融資残高が増加しているのはノンバンクを除けば不動産業だけ。不動産取引の活発化の理由として「大都市での値ごろ感」「低金利環境の継続」「経済活動の活発化」―の順に要因を列挙。この順番が、要因の重要さを示すなら、景気回復よりも、金融緩和の効果が大きいとの認識を示したものとみられる。 さらに、地価下げ止まりが明確な東京都心、横浜市内などでは「不動産投信(REIT)や私募投資ファンドの形で、機関投資家だけでなく個人投資家の資金が流入している」と指摘。福岡では外資系投資銀行を交えて同様な投資が「やや過熱気味」と踏み込んで分析し、個人富裕層の運用に加え、だぶついた銀行の融資が入っている可能性を示唆した。 「政策変更とCPI」の約束は、そう簡単に中身を変えるわけにいくまい。だからこそ、第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「これまで資産価格と政策の関係を明確にしなかったことが無責任だった」と批判。CPIの動向を展望すると、電力料金や携帯電話など情報通信料の下げで、やや下押し圧力もある。原油高や円安などによる上昇圧力の顕在化はまだ先の話だ。「日銀がCPIだけでなく、資産価格も加味した金融政策運営への移行を探っている可能性がある」とする推測には、一定の説得力がありそうだ。 | |