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| 中国の人民元切り上げから約二週間が経過した。予想外に早いタイミングで実施された人民元改革は世界の金融市場を驚かせたが、その後の展開は「安定」を重視する中国当局の意思を反映してか、大きな混乱もなく推移している。ただ、改革の当初、米国など各国首脳は「世界経済の不均衡是正に貢献する」と高い評価を示したが、次第に前向きの評価は薄れ、関係国の不満が高まってきたようだ。米国のスノー財務長官は「為替の変動幅を抑えているのは問題」として、「柔軟性拡大への継続的な努力」を強く求めている。 中国はこの二週間、新レートの一j=八・一一元(旧レートは八・二七元)に日々収斂(しゅうれん)するよう、中国人民銀行(中央銀行)が強力な為替介入を行い、事実上の「固定相場」の維持に努めている。「改革」では、対ドルで上下0・3%の変動幅を容認したはずだが、実際は小数点以下三ケタの微小な変動でしかない。このため、市場関係者の間では、管理フロート制といっても、その実態は「対ドルレートを2%切り上げただけ」との見方が多い。米政府などは、こうした改革後の為替政策に不満を強めている。 米国議会では、人民元を切り上げなければ制裁関税を課すという対中通商法案の採決を、当初の七月末から今秋に延期したが、その後の実際の切り上げ発表で議会の不満も和らいだかに見えた。しかし、切り上げ幅が小幅だったことから、法案採決見送りまでには至っていない。提案者のシューマー上院議員らも「その後の為替運営をよく見てから(法案の取り扱いを)判断する」と、対中強硬姿勢を崩していない。 こう見てくると、今後の人民元をめぐる米中摩擦は、今回の切り上げだけで問題解決とはとてもいきそうにない。中国としては、ドル・ペッグ制から管理フロート制への移行を大過なく通過し、とりわけ国際競争力の低い国内輸出産業への影響を最小限にとどめたいとする思惑が強い。このため、為替変動幅の拡大は介入によってできるだけ抑え込み、輸出企業の体力強化まで半年から一年程度は「時間稼ぎ」をしたいという方針だろう。 となると、「人為的な為替介入」に対して、米議会などから再び強い不満が巻き起こることは容易に想像される。また、現状の2%程度の切り上げで、米国の対中貿易赤字が削減されることはまずあり得ない。米政府は今年十月に「不正な為替操作を実施する特定国」について報告書を作成するが、その際、中国をどう評価するかが次の焦点となる。 ただ、米国政府としては、中国が為替変動幅を徐々に拡大し、実態的に5〜10%程度の切り上げ幅になれば、議会などの不満はある程度抑え込めるとみている。中国に資本進出した米系大企業の利害も大きく絡むため、大幅な切り上げへ単に「圧力」を掛け続けるのは得策ではないといった判断があるためだ。また、廉価な中国製品を歓迎する米国消費者の声も無視できない。 従って、今後の展開としては、米議会の不満再燃の動き、柔軟な為替政策を求める米政府、国内重視の中国当局という三者の「我慢比べ」の様相を呈してくるだろう。米中政府間には、中国がスノー財務長官に事前に今回の改革内容を通報していたように、水面下の協議ルートがあるのは間違いない。問題はそうした交渉のバランスが壊れ、事態が緊迫化した場合の対応をどうするかである。 中国の人民元改革では、もう一つ「通貨バスケット」の問題があるが、中国当局はその中身をいまだ公表していない。いずれ世界一の外貨準備保有国になるであろう中国が、ドル建て準備をどう運用するかは大きな焦点であり、そこで仮に大掛かりな「ドル資産離れ」が起これば、世界のマネーフローにも影響する。そのことを、米政府は実は最も心配しているとの指摘もある。人民元改革を単純な「摩擦論」や「圧力論」だけで捉えるのは、単純すぎることを、この際われわれは理解しておいた方がよいだろう。 |
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