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| 曖昧なシーリング
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| 日本列島は今や九・一一投開票の総選挙ムード一色。それも「郵政民営化の是非」をめぐる自民党内の攻防に世間の耳目が集まり、小泉首相が仕掛けた「郵政解散」の巧みな選挙戦略が奏功しているように見える。しかし、衆院解散直後に政府が決めた二〇〇六年度予算編成の概算要求基準(シーリング)を見る限り、「改革戦略」を標榜する小泉政権の真剣度はあまり伝わってこない。当の財務省でさえ、これでは財政再建に向けての「歳出削減は切り込み不足」と不満を漏らしているほどだ。 関係者によると、今年のシーリング設定は異例続きの連続だったという。八月八日の衆院解散の直後、小泉首相は谷垣財務相を官邸に呼び、二〜三日以内にシーリングを決定すると宣言。自民党など与党との事前調整を一切省略して、八月十一日に総額四十七兆五千四百億円の概算要求基準を決定した。 しかも、その中身について、小泉首相自ら「公共投資は3%削減、社会保障費は前年と同じ二千二百億円の圧縮」と財務相に直接指示を出し、そのまますんなり決まったという。例年なら事前に財務省が関係各省や与党と協議して決めるが、今年は解散・総選挙という異例の事態のため、時間がなかったという事情もあり、まさに「鶴の一声」だった。 ただ、今回のシーリング内容は、歳出削減の力点が曖昧なままの不徹底な内容と言える。とりわけ、焦点の社会保障費(二千二百億円削減の二十兆一千億円)については、財務省でさえ当初は、一兆円以上の自然増に対して四千〜五千億円の圧縮をもくろんでいたのに、実現しなかった。医療制度改革に伴う医療費の自己負担引き上げや公的医療の対象範囲縮小など、政治的に難しい問題を官邸がさっさと先送りしてしまったためだ。 確かに、公共投資(八兆円)の3%カット継続や裁量的経費の科学技術振興費、ODAのカット幅拡大(3%)などは評価されるが、こちらは予算にめりはりをつけるための「重点化枠」(一千億円)の設定で、いざという時の救済措置もきっちり用意してある。要するに、選挙という緊急事態に事寄せてシーリングを決定したものの、首相お得意の「歳出改革」の理念がはっきりしない曖昧な内容となっている。 しかも、自民党や与党内で議論された形跡はなく、首相の独断に近い形での決定であり、選挙後に党内から不満が出ればややこしい議論はまた先送りしてという魂胆が見え透いている。選挙に臨む小泉自民党のマニフェストを見ても、財政健全化や各種制度改革についての具体的な数値目標はない。相変わらずといえばそれまでだが、小泉首相の「ワンフレーズ・ポリティックス」で国民を引っ張り、具体論は常に先延ばしといういつものスタイルと言われても仕方がないだろう。 財政再建については、「歳出・歳入の一体改革」が不可欠だ。しかし、首相自ら任期中の消費税引き上げを封印してしまったからには、歳出面の削減努力はもっと具体的で分かりやすい目標を政権政党として掲げる義務がある。財務省の若手官僚によれば、日本の財政危機は「もはや小手先の政治テクニックでは修復不可能な状況」だという。 郵政民営化も「官から民へ」資金の流れを変えるという意味で必要な政策だが、足元の予算編成でいつまでも小手先の対応を続けていては、「改革政党」という看板が泣く。少なくとも「三年で十兆円の歳出カット」「十八兆円の補助金廃止」など具体的目標を掲げる民主党の方が、選挙公約としてははるかに分かりやすいことだけは間違いない。 仮に九月の総選挙で自民・公明の与党が敗退し、政権交代が実現すれば、今回のシーリングはいったん白紙に戻され、予算編成は一時的に混乱する可能性もあるが、本当の改革を目指して歳出改革に取り組むのであれば、それも許されるのではないか。 |
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