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経済評論家 小倉豊
精神衛生で労政審の残業悪玉論に疑問

尾辻秀久厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会は、昨年、メンタルヘルス対策として一カ月百時間を超える残業をした労働者に、医師による面接・指導を義務付ける意見書を発表している。いわば、心の病をもたらす元凶は、残業対策との認識が色濃いとの結論。これに対し、社会生産性本部(会長・牛尾治朗ウシオ電機会長)がこのほどまとめた「産業人メンタルヘルス白書」は、長時間労働を悪玉とする見方に、詳細な調査で異論を唱えた形になっており、日本人の働き方、職場風土を考える材料になりそうだ。

調査は、同本部のメンタルヘルス研究所が、職員の健康調査を請け負った十四社と一自治体の一万三千八十六人が対象。各労働者の健康状態を把握したうえで、精神衛生の専門家に相談したほうが良いと忠告せざるを得ない、精神の健康が要注意の人をまず抽出。相談した人に、職場環境などをヒアリングして原因分析を試みた。

その結果は、「各人が何をやればよいか互いに了解する職場の設計」が有効というもの。「職場で仕事の範囲、責任が明確になっているか」に関して、「とても明解」な職場では、要注意の忠告をした人の比率が4・3%、「ほぼ明解」では6・7%、「あまり明解でない」では11・3%、「非常に不明解」では18・2%と、はっきりした相関関係が出た。さらに、月間残業時間を、十時間未満で0、八十時間以上で9と段階的に指数化すると、仕事の責任が「とても明解」の4・0から「非常に不明解」の4・9まで相関が明確で、各自の責任範囲が明解な職場では残業は少ない。

どうも、厚労省には、長時間労働者を特定して対策を講じるような発想が透けて見える。だが、ひとつやり方を間違えれば、本人の仕事の意欲を削ぐだろうし、長時間労働に罰則的な対応をする言語道断な経営者、管理職が出てくるのは目に見えている。残業のない状態で仕事が完了すれば、もちろん、それに越したことはない。要は、一人ひとりが何をやればよいか互いに了解している、そういう職場作りがメンタルヘルスにも残業減少にも前向きな対応であることを、厚労省や経営者は肝に銘ずるべきなのだ。



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