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経済評論家 川野一秋
注目される「売り方」
10月から郵便局で投信販売スタート
全国五百七十五カ所の郵便局で十月から投資信託の販売がスタートする。証券業界は、「投信市場のすそ野拡大につながる」と基本的には歓迎しているが、その一方で「売り方」によっては投信そのものの信頼失墜を招くとの不安も漂っている。

郵政公社は、野村アセットマネジメント、大和証券投資信託委託、米ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントが運用する投信各一本を販売商品に選定した。初年度の半年間で約一千億円、五年後には一兆五千億円の販売残高を見込んでいる。投信を販売する郵便局の数や商品は二年目以降段階的に拡大する計画だ。

郵便局の代表的な金融商品は定額貯金、簡易保険。いずれも元本が保証されたものであり、今回の投信販売はリスク商品を扱う初めてのケースとなる。このため、郵政公社では「貯金とは全く別の商品であることを顧客に十分説明するよう、販売担当者には厳しく指導している」と強調するが、全国で五千人近くに達する販売担当者に商品の仕組みを十分理解させ、適切な売り方を完全に周知させるのは、かなり大変な作業である。

顧客の中には「あなたを信用しているから、商品の選択は任せます。とにかく儲かる商品をお願いします」といった人が出てくることが予想される。その時にきちんと対応できなければ、将来、言った、言わない、の争いになることは目に見えている。

投信そのものの信頼を失いかねないと証券界の一部に不安が広がるのは、個人顧客に値下がりリスクなどを十分に説明しない不適切な「売り方」が行われるケースを想定してのことだ。郵政公社は、販売担当者にこの点をしっかり理解させることが極めて重要だ。

しかし、こうした心配が杞憂に終わり、郵便局での投信販売がうまく進めば、投信市場ひいては株式市場全体の規模拡大につながることは間違いない。

八月末現在で二百八兆円もの巨額の資金を抱える郵便貯金の一割が投信にシフトすると、現在約四十五兆円の投信市場は一気に一・五倍に拡大する。また、郵便局という人々に最も身近な金融機関で、資産運用の相談が気軽にできる環境が整えば、預貯金中心の個人金融資産が地殻変動を起こし、預金から株式・債券などへの資金移動が加速する可能性もある。

このように郵便局がリスク商品を販売する意義やその影響は極めて大きい。それだけに、郵政公社は投信販売を手っ取り早い収益チャンスと位置付けることなく、丁寧な販売に徹してほしい。



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