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経済評論家 原田淳也
政策金融改革、焦点は「機能論」に

先の総選挙で圧勝した小泉政権は「改革政策」加速に動きだしたが、年金・医療制度改革などと並んで、政策金融改革が次の大きな焦点となってきた。郵政民営化が財政投融資改革の「入り口」とすれば、その「出口」に当たる政府系金融機関の再編統合や効率化は、公的部門の構造改革を実現する上でどうしても必要不可欠なためだ。

竹中平蔵経済財政担当相は、対象となる八つの政府系機関について、(1)融資残高の対GDP比率半減の目標達成の道筋を明確化する(2)政策金融の「機能」を中心に統合再編を考える―として、今秋十一月にも基本方針を打ち出すという。自民党は先の選挙で政府系金融について「改革実施は二〇〇八年度以降」と公約しており、政府与党としてもこの問題はもはや先送りできない状況にある。

だが、当の政府系機関からは「機関の数を単に減らすだけの改革は絶対困る」といった反発の声が早くも上がっている。対象の政府系機関のトップは、一部を除きほとんどが霞ヶ関の主要官庁(財務、経済産業、農水省など)からの天下り組が占める。「政策金融」という建前からも所管官庁とのつながりは極めて濃い。そうした事情もあって、政府系金融をめぐる小泉・竹中ラインの「改革」は、おそらく霞ヶ関官僚たちとの戦いとなるだろう。

国全体のバランスシート(資産・負債)から見れば、日本の政策金融の融資残高百六十四兆円(住宅融資を含む)は確かに多過ぎる。また、対GDP比率も欧米先進国の中ではずば抜けて高い。膨らみ続ける財政赤字を考えれば、こうした国が関与する政策融資のボリューム自体も大幅にカットしていくことが望ましい。

ただ、そこで問題となるのは、「政策金融」とは何かという古くで新しい政策論争。かつて、財政投融資が使い放題だった時代に、日本開発銀行(現、政策投資銀行)は民間銀行を押しのけて、街のラブホテルにまで融資したことがある。最近では中小企業金融の分野でも、商工中金が国の制度融資を武器に地方銀行などの民間金融と衝突し始めている。常にどこまでが公共サービスとしての政策金融なのかという線引きが曖昧になっているわけだ。

例えば、政策投資銀行の場合、大手商社や電力、鉄鋼会社、大手私鉄などへの長期融資残高が依然多い。資源エネルギー開発や原発建設、鉄道輸送サービスといった公共性の高い分野の政策融資を重視してきた結果ではあるが、今や時代の変化とともに民間銀行でも十分対応できる部分も少なくない。ある私鉄大手のトップは「当社のメーンバンクは政投銀だから万全」とうそぶいていたが、これでは公共事業にどっぷり浸かったゼネコンと同じで、民間の活力再生など期待すべくもない。

政策金融改革は、まさにこの「機能」としての線引きをどうするかが大きな焦点となる。その意味で、竹中氏が「機能論」を全面に掲げたことは基本的に正しい。問題はその「機能論」をどこまで具体化して、「官と民」を細かく区分けできるかである。対外経済協力やODA関連の政策金融(公共性が高い)は比較的分かりやすいが、中小企業金融となると融資対象や国が関与する制度融資の違いなどもあって、そう簡単ではない。実際、日本商工会議所は早々と、中小企業向け政策金融機関の再編統合には猛反対している。

竹中氏は、金融相時代に作成した地域銀行向けの政策指針「リレーションシップ・バンキング」の中で、政府系金融機関との連携強化を打ち出した。今度はその政府系機関の側の見直しを進めるわけだが、「官と民」の切り分けを断行していけば、これまでの官民協調という路線と矛盾しないのか、その政策論が問われる場面も出でくるだろう。

今回の政策金融改革について、国際経済協力銀行、国民生活金融公庫のトップを占める財務省次官OBは、「改革は(政策金融の)機能を中心に検討すべきだ」と口をそろえる。竹中氏と同じ「機能論」を唱えていることは、同床異夢としても興味深いところだ。



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