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経済評論家 小倉豊
公認会計士逮捕と温泉ファンド
赤字法人融資は不良債権か?
名門企業であるカネボウの粉飾決算事件が、同社担当の公認会計士四人の逮捕劇にまで発展した。会計士が粉飾の手口を指南していたとされ、長年の癒着なれ合いの色彩が濃い。所詮、企業から報酬を受け取る会計士には、厳正な監査は無理かと疑わせる点で、深刻な事件と受け止められている。そんな中、厳正な監査や資産査定とは何だろうかと考えさせられたのが近頃の「温泉ファンド」の流行である。

温泉ファンドは、破綻した足利銀行に連鎖する形で経営に行き詰った日光・鬼怒川温泉で、産業再生機構の肝いりの「とちぎフレンドリーキャピタル」が発足。また、会津若松の東山温泉には東邦銀行と東京の投資会社が「福島リバイタルファンド」、伊豆天城湯ヶ島温泉では日本政策投資銀行とスルガ銀行が「落合楼事業再生」ファンドといった具合で相次いでいる。

足利銀行といえばそれ自体が、同行担当の公認会計士が過去の決算の粉飾を主導したとして、金融庁が送り込んだ新経営陣が損害賠償を求めて提訴している。鬼怒川温泉は同行の不良債権の「火薬庫」とされていたわけで、足利銀行の資産査定に問題があったとすれば、温泉宿向け融資の査定・監査に問題があったことになる。

旧知の銀行マンの某氏が首をかしげて語ったのは次のような疑問だ。果たして、決算で黒字を計上している温泉宿が、日本中探していくつあるだろうか。経営は悪くなくても、黒字が出て法人税を納付するくらいなら、そのお金でリニューアルしたり、同じ料金で料理やサービスの質を上げてでも赤字にするのが通例なのだ。赤字続きだから要管理債権であり、不良債権だという査定をすれば、温泉宿向けはほとんどが不良債権になる。さらに言えば、温泉宿に限らず、中小企業はどこも同じような理由で見かけ上は赤字経営だ。

確かに、温泉ブームに取り残され、時代遅れの団体向け大宴会場に閑古鳥が鳴いている宿もある。だが、投資ファンドを組成して再生を目指すことは、高い運用利回りを得るための効率的な黒字経営を必要とする。某氏は「そんな温泉宿にわざわざ泊まりたくない」とつぶやく。

温泉宿は中小事業者の常道のように、赤字であるのが普通だ。実は、金融庁もこうした実態に対応して、地域金融機関向けの別の査定基準を定めている。要は、「赤字でも健全」な中小企業向け融資は、出資と同様に見なすというもの。返済可能性は必ずしも問わず、配当のように、利子が払われればいい。大手行、大企業に対する基準と異なるこのダブルスタンダードがなければ、どんな地銀、信用金庫、信用組合も壊滅だろう。日常を離れて名湯につかれれば至福だが、確かにそこには、生き馬の目を抜く資本市場とは別の世界がある。投資ファンドはいかにも似つかわしくない。



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