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経済評論家 原田淳也
緩和解除後の「利上げ」はどうなるか

日銀が量的金融緩和策の解除に向けて、「地ならし」の動きを本格化させている。緩和解除の一つの条件である消費者物価の前年比プラスが今年末にも実現しそうなことや、福井俊彦総裁をはじめ日銀政策委員会メンバーたちが挙って緩和解除のタイミングに言及し始めたためだ。金融市場では来年三月末、遅くとも四〜六月の解除を見込んでいるが、先行き下方屈折も予想される景気情勢とも絡んで、すんなり実現できるかどうかはなお不透明だ。

今週公表された九月の日銀政策委・金融政策決定会合の議事要旨によれば、委員の間から緩和解除に向けて準備を急ぐよう求める意見が出されている。実際、九月入りして以降、「ハト派」と見られていた武藤敏郎副総裁が「早期解除」に言及したり、福井総裁も国会答弁で「量的緩和は異常な政策」と指摘するなど、緩和解除が「そう遠くない時期」であることを強くにじませている。

ただし、量的緩和の解除が直ちに金利引き上げにつながるかどうかは大いに疑問。緩和解除はあくまで、金融政策のターゲットを「量」から「金利」に戻すだけで、当面はゼロ金利政策を続け、一定期間後にゼロ金利をプラス金利に引き上げる形の二段階で実施するというのが、日銀の基本的なシナリオとみられる。

となると、日銀は今年十二月公表の消費者物価(十一月分)が前年比プラスに転じたあと、二〜三カ月プラスが継続するのを確認した上で、来年春にまず量的緩和解除に踏み切るだろう。だが、その後の金利引き上げ(ゼロ金利の解除)をいつ実行するかについては、今のところ一切言及していない。実はこの点が今後の政策運営を見る上で最も重要なポイントになると思われる。

金利引き上げは、その時点の景気動向や物価情勢に大きく依存するが、現状では原油高の影響はあってもインフレ懸念とまではいかないこと。さらに、「緩やかな拡大」を続けている景気も米国経済の減速などでピークアウトする可能性もある。そこで慎重の上にも慎重を重ねて、量的緩和は解除するが「利上げはまだ先」というスタンスを示したいというのが、日銀の偽らざる本音ではないか。

ただ、こうした考え方には、「緩和解除は時期尚早」として日銀を強く牽制する政府サイドの意向を意識した側面もうかがえる。来月発足する小泉改造内閣は引き続き改革政策を掲げて財政面では緊縮政策を続行するのは間違いない。日銀の早期利上げは膨らみ続ける国債費の膨張を抑止する上で障害となる可能性は大きい。従って、緩和解除はぎりぎり容認できても利上げだけは阻止したいというのが、政府側の本音であろう。

となると、利上げについては「先延ばし」と考える日銀との間で政策面での「妥協」が実現する公算が大きい。だが、国債費に直結する長期金利は金融政策の埒外にあり、日銀の利上げ先延ばし政策が狙い通り市場に受け入れてもらえるかどうかは、全く未知数である。従って、量的緩和解除後の「遠く離れた利上げ」に至るプロセスを「市場との対話」を通じてどう浸透させていくかが、今後の重要なカギを握っている。

国債の市場金利は既に九月末に1・5%台に乗せた。住宅ローンなど一部の民間長期金利も上昇の兆しを見せている。緩和解除をめぐる論議が沸騰するにつれて、市場は量的緩和政策の「時間軸効果」をそれほど意識しなくなってきた。最悪の場合、量的緩和を解除してゼロ金利を維持したとしても、長期金利が暴騰して景気腰折れを招くという事態に陥る可能性もある。日銀は、緩和解除後の利上げに至るプロセスについて、国民や市場を納得させる説明責任が今求められている。



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