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経済評論家 原田淳也
「禁煙大国」への道は開けるか

未成年者の喫煙防止を目的に、たばこの自動販売機に成人認証カードを導入する計画が進められている。たばこ関連業界が資金を出し合い、既に一部地域(種子島)で実証試験を開始。これがうまくいけば、二〇〇八年から全国のすべてのたばこ自販機を改修する計画だ。総費用約八百億円は、すべてたばこ業界が負担することになる。

日本は〇四年に「たばこ規制に関するWHO枠組み条約」を批准したが、その中には未成年者保護のために自販機の設置規制や廃止の方向が打ち出されている。批准国として「世界の大勢」に従うのは当然だが、カード制の導入という何とも日本的な規制では、本当に未成年者の喫煙防止に役立つのかどうか疑問は多い。むしろ、利便性の低下によって成人喫煙者が減り、たばこ需要全体の縮小につながるだろう。

日本の喫煙人口は約二千二百万人とされる。このうち喫煙率が高いのは四十〜五十歳代の男性だが、今後の推移を予想すると、まず〇七年の「団塊世代」の大量リタイアがある。老後の生活設計を考えると、退職をきっかけに喫煙者の多くは健康のことも考えて「禁煙」に傾くだろう。喫煙世代のリタイアは当然、たばこ需要全体を押し下げる。

同時に、日本の場合、今後一〜二年以内にたばこ税が引き上げられることは確実。税収はわずかでも財政再建の小道具として、税務当局が見逃すはずはない。となれば、たばこの小売価格は現在の平均三百円から四百〜五百円に跳ね上がる。価格効果は需要抑制に拍車を掛け、喫煙人口も減るだろう。

そこへ、〇八年からの自販機規制が加わる。未成年者保護という目的は正しいとしても、喫煙者がわざわざカード登録してまで自販機でたばこを買う「不便さ」を甘受するとは思えない。この際、喫煙をやめようという人がおそらく増えるだろう。日本の場合、これが「喫煙者いじめ」の決定版になる公算が大きい。

しかし、こうした過程を経ても、例えば未成年者の喫煙率だけが低下しないとしたら、問題はもっと深刻だ。実際、たばこ自販機の深夜規制(未成年者保護のため午後十一時以降は稼動停止)を実行しても、その効果はほとんどないとされる。カード制を導入すれば、むしろそのことが利権化したり、新たな不正を生み出す温床となる可能性もある。

未成年者保護を本当に徹底するなら、たばこ自販機という日本的な販売システムを廃止する方がむしろ筋は通る。本来、たばこ自販機は購入者を「視認」できる範囲内に設置するという規制があるが、現実には全く守られていない。販売規制というルールを「大人」たちが守らないようでは、未成年者に対して示しはつかないはずだ。

いずれにせよ、日本はようやく「禁煙大国」への道を歩み始めた。愛煙家にとっては寂しい話ではあるが、たばこが嗜好品である以上、喫煙ルールやマナーを守る少数者の存在を容認するという民主主義の基本だけは忘れてほしくない。
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