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| 支援が切り札は遠い昔
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| 五年ぶりに来日したロシアのプーチン大統領と小泉純一郎首相の首脳会談は、北方領土問題を当面棚上げにして、経済交流の拡大を図る方向を示したといえる。中国との間で起きているいわゆる「政冷経熱」が対ロシアでも進行している形だ。この背景には、原油価格の高騰を受けたロシア経済の好転があり、援助をテコとした関係改善はもはや不可能な情勢。政府は「経済交流の拡大を通じた信頼の構築」(外交筋)を通じて、領土問題の解決策を模索するというのだが…。 ◆大国の自信 旧ソ連の崩壊を受けて誕生したロシアは、急進的な経済改革が裏目に出て、一九九〇年代は莫大な対外債務を抱えて窮地に陥った。打開策として期待したのが日本の資金力。ロシアの柔軟姿勢を受けて橋本龍太郎首相(当時)は一九九八年、来日したエリツィン大統領(同)に対し、北方四島の北側で日ロ間の国境線を画定させる一方で四島の施政権を当面ロシアに認める提案をした。この提案は、ロシアが拒否したため立ち消えになったが、日本の経済力をバックに領土問題が解決に向かう糸口が見えた時期だった。 領土問題が進展しない中で、ロシアは対独戦勝六十周年を今年迎えて祝賀式典を開催し、「大国意識と自信が国民に広がった」(外交筋)。さらに、原油価格の高騰で石油輸出国のロシアは国家財政が潤沢になり、対外債務の繰り上げ返済を実施したほど。「援助は不要になっている」と言われ、領土返還の議論ができる情勢でもなくなった。 ◆日本の投資に期待 こうした経済状況下で、日ロ首脳会談は開かれた。小泉首相は「領土問題の立場の隔たりが大きかった」と指摘した一方で、東シベリアの石油パイプライン建設に必要な協力に関して年明けにも相互了解する方針を確認。ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟に向けた二国間合意文書にも署名し、経済交流を拡大させるべきだとの認識で一致した。 このパイプライン建設への協力は、ロシアへの支援よりも、日本のエネルギー安全保障に主眼が移りつつある。ロシアはエネルギー需要が急速に高まっている中国へもパイプラインを使った原油供給を予定。日中両国を競わせており、ビジネスとして建設協議が進んでいるのが実態だ。 ただ、日本からの投資に対する期待は大きい。極東地域に済むロシア国民は約六百万人。この地域には合法非合法を含めて約二十万人の中国人が居住しているが、「粗悪品を売ったり、物資を買い込んで帰ったりして評判が悪い」(関係筋)といい、日本が本格的に進出する素地があるとされる。 ◆平和条約不要論 日本とロシアの人的交流は現在、年十三万人程度。「旧ソ連時代のほうが経済的、政治的な関係は強かった」と言われる。貿易額は増加傾向にあるものの、年七十五億ドル程度。ロシアへの投資には法整備の不備もあってリスクが高く経済関係は極めて脆弱だ。ただ、WTOに加盟すれば貿易や投資に国際ルールが適用されるため進出リスクが低下する。トヨタ自動車は既に市場規模の拡大を見込んで工場建設を決定している。 外務省は「経済協力の深化、強化を通じて日ロ政府間や民間の信頼関係を構築し、領土問題の解決を目指す」(幹部)としている。これは中ロ関係を参考とした戦略だ。ロシアは中国に対して石油などエネルギー資源のほか大量の武器を輸出している。ロシアの武器輸出の四割程度が中国向けとされ、人的往来も年数百万人に達する。強い経済関係があったからこそロシアは今年、大幅に譲歩する形で中ロの国境線を確定。プーチン政権への批判が高まったが、経済利益を重視した政治決断だった。 日ロの領土問題にも同じ図式が当てはまり、ロシア政府が解決に動きだすかどうか。経済関係が深まれば深まるほど、領土問題の解決や平和条約の締結が不要だと考える向きが増えないとも限らない。 |